第13回 熊大附小国語授業研究会「明後日の会」を開催しました!!

公開日: 2020年9月25日金曜日

 昨日お伝えしておりました「第13回 明後日の会」を、先ほど終えました。

学習材である「お手紙」に全国の先生方と向き合うことのできた60分間。会を開催した側だったのですが、話題提供が進む程に、ご参会の先生方と一緒になって読み深めていくことができている感覚を持つことができました!!

オンラインでの双方向の研究会を開くことに、大きな不安があったのですが、大阪府や京都府、兵庫県、三重県の関西の先生方や、石川県の先生、群馬県の先生、教科書会社でご勤務の方など、全国の先生方と実際に交流することができました。また、話し合いをじっくりお聞きいただく形でご参加いただいた全国の先生方からも、満足していただけたことが伝わる感想がたくさん届き、胸が熱くなった次第であります。開催者した者として、本当に開催してよかったなと、少し興奮した状態で、このブログを書いております。本当にありがとうございました。

今回取り扱った物語は「お手紙」でした。もう小学校2年生の定番教材と言ってもいい作品です。

会の中でも話しましたが、「あなたは、かえるくんとがまくんのどちらに似ている?」と尋ねられたら、私は迷うことなく「がまくん!」と答えてしまう程、内面はがまくん寄りの私です。だからこそ、がまくんに強めの共感を得ながら、この「お手紙」という物語を読み進めてしまいます。

今回の「明後日の会」では、本校国語科の3人から、この「お手紙」を読む上での話題提供を行い、それぞれの話題に対して、本校の3人が対話するという形で進めました。その中で気づかれたことや考えられたことを、全国の先生方からご意見いただくという形で進めました。当然、「ただ聞きたいだけなのに…」と思われる方や「意見を求められるのはちょっと…」という方もいらっしゃるので、ギャラリービューには顔を出さない形での参加の仕方もご準備しました。その先生方からも、たくさんの温かいご感想が届いたことに、嬉しい気持ちでいっぱいであります。

さて、本校国語科の3人が提供した話題とは、次の3つでした。

田邉…どうして手紙の中身を言っちゃったの?

溝上…がまくんは、いつベッドから起き上がり、いつかえるくんのそばへ行った?

中尾…手紙の内容を知った2人が、幸せな気持ちで手紙を待つことができたのはなぜか。

この話題は、前日に共有したのですが、その話題についての考えなどは全く共有しませんでした。提供する話題の重複を避けるための確認だけでした。そのため、どのようなZOOM研究会になるか、出たとこ勝負の会でした。

まず、1つ目の田邉教諭からの話題に対する考えですが、話し合いの進行ばかりに意識が向いてしまい、記録がうまく取れておりませんでした。結果、ここでは話し合いの中でいただいたご意見を参考にしながら、私が創り上げた読みを載せさせていただきます。

「どうして手紙の中身を言っちゃったのか?」に対する私の読みは、「手紙を待つというがまくんの『負』の時間を、変えるためのスタート台にがまくんの立たせるため」というものでした。

田邉教諭の問いに答えるためには、物語前半にある「ふしあわせな気持ち」を読まなければなりません。「ふしあわせな気持ち」になるのは、「一日のうちのかなしい時」です。つまり、一日のうちには、かなしい時以外の時間もあるわけです。その中の「お手紙をまつ」時間が、「ふしあわせな気持ち」になるのです。

ここで読み違えてはいけないのは、「手紙がこないこと」が原因ではなく、「手紙をまつ時間」であるということです。かえるくんは、続けて「いちどもかい」と聞いたとおり、がまくんは、一度ももらったことがないのです。「お手紙を待つ」時間とは、ちょっとの時間ではなく、気の遠くなるぐらい長い時間なのです。

そんな「手紙を待つ」という、がまくんの長い長い『負』の時間に、かえるくんは気づくことができていませんでした。だからこそ、がまくんのそんな長い『負』の時間を変えたいと思ったのです。そのためには、『負』の時間と同じぐらいの「お手紙を待つという『正』の時間」が必要なのです。

がまくん寄りの自分からすると、そのいじけた気持ちは、とてもよくわかります。かえるくんという、自分の家にやってきてくれる大切な友達がいるのに、「だれも、ぼくに お手紙なんかくれたことがないんだ」と答えてしまうぐらいです。そんないじけたがまくんの気持ちを変えるには、相当なことが必要です。それを私は「お手紙を待つ『正』の時間」と捉えました。

だから、かえるくんは大急ぎで家に帰り、手紙を出したのです。それなのに、がまくんは手紙を待つスタート台に立ってくれません。かえるくんのお手紙を待ったら?という誘いに、一切乗ってこないのです。「お手紙」所収の「ふたりは ともだち」の最初のお話である「はるがきた」では、春が来たのにベッドから起き上がらないがまくんを、ベッドから押し出したのに、今回は全くしません。それは、やはりがまくんに自分から「お手紙を待つ」ということを始めてほしかったのだろうと考えました。けれども、この物語の底流に流れる「ユーモア」が、かえるくんに書いた手紙の内容を話させてしまうのです。手紙を待つスタート台に立ってほしいのに立たないから、ぽろっとその内容を言ってしまうかえるくんに、くすっと笑ってしまいながらも、心を温かい気持ちにさせてくれます。これこそが、かえるくんに手紙の中身を言わせてしまった原因だという考えに至りました。

2つ目の「がまくんは、いつベッドから起き上がり、いつかえるくんのそばへ行った?」に対する私の考えは、「『きみが。』と言った瞬間に起き上がり、その後じわじわ近寄って行ったのではないか」というものです。

がまくんはベッドで寝ています。それは「手紙をもらえないことからの『ふて寝』」というよりも、一日の中の「お昼ね」の時間としての行為であると考えます。(このことについては、溝上教諭は「かえるくんが帰ったことによるふて寝」と考えていました。物語の最初にある「今、一日のうちの」をどう読むかにもよると思いますが、意見が分かれました。)

せっかく「一日のうちのかなしい時」が終わったのに、突然返ってきたかえるくんは、そのかなしい時に、がまくんを戻そうとするのです。物語にある通り、がまくんはいやがります。当然、このやり取りの最中は起きていないでしょう。

物語を読む中で、ここまでは絶対起きていないだろうという点として、「かえるくん、どうして、きみ、ずっと まどの外を見ているの。」という叙述までは、起きていないと考えます。この発言は、窓の外が見えない状態にがまくんがあるからこそ生まれたものだと考えます。だから、ここまでは決して起きていないと考えます。

では、がまくんはいつ起き上がったのでしょうか。その答えが「きみが。」のところだと考えるのです。

「きみが。」と言った瞬間、起き上がったと考えました。この意見には、田邉教諭と全く一緒でした。しかし、その起きた後のがまくんの行動には、違いがありました。実際に演じてみてくれる田邉教諭の姿に、動作化することによって読みの違いは明確になると感じました。がまくんの性格から考えてじわじわ近寄って行ったのか、何と書いたのか知りたくてさっと移動したのかは明確な決定はできませんが、その読みの違いを表出させることが、物語の想像を広げることがわかりました。

最後に、私の話題「手紙の内容を知った2人が、幸せな気持ちで手紙を待つことができたのはなぜか。」です。

そもそも「手紙」とは、どんな手紙が送られてくるのか想像しながら待つことが楽しいものです。何が書かれてあるか知ってしまったら、幸せな気持ちで待てないのではないかと考えたのです。しかも、「ふたりとも」です。

この話題を考えるためには、まず「かえるくん」と「がまくん」に分けて考えることが必要です。

最初に、がまくんが幸せな気持ちでなぜいられたのかを考えます。

がまくんが幸せな気持ちでいられた理由を考える時に読まなければならないことは、「ああ。」です。この「ああ。」を、前の文の「きみの親友、かえる」につなげるならば、かえるくんという自分にとって大切な存在がいることを理解したことや、そんなかえるくんと一緒にいることを理解したことで、幸せな気持ちになったと考えられます。

また、この「ああ。」をその後の「とても いいお手紙だ。」とつなげて読むならば、送られてくる手紙を待つことで幸せになったと考えられます。

つまり、がまくんの気持ちを読む上で「ああ。」をどう読むのかが大切になってくるのです。

話し合いの中で、京都の先生から「きみが。」をどう読むのかについても出されました。この「きみが。」を驚きとみるのか、お尋ねと読むのかでも変わってきます。そのような言葉の読み方にこそ、「言葉による見方・考え方」が働くのだと思います。

では、「かえるくん」が幸せな気持ちでいたのはなぜでしょう。それは、「不幸せながまくんではない、幸せな気持ちのがまくんと一緒にいられるから」と考えます。「だれも ぼくに お手紙なんかくれたことがない」と言ったがまくんが、かえるくんのがまくんへの思いに気付き、気付いたからこそ幸せになり、そんながまくんと一緒に居られるから、かえるくんは幸せな気持ちになれたのです。悲しい気分の時には「こしをおろして」いたのに、幸せな気持ちの時には「すわっていました。」。2つの2人の行動を表す言葉から想像される姿には、やはり違いが生まれています。「こしをおろす」には、あまり2人の意思のようなものは伝わらず、「座る」には、意思のようなものを感じます。そのような言動を表す叙述からも、様々なことが想像されます。そのような読みができたことが今回の研究会の大きな成果でした。

この私の話題提供には続きがありました。

この2人の幸せな気持ちを考えた先には、「かえるくんから直接ではなく、かたつむりくんによって、手紙が届けられないといけなかった理由は何か?」ということです。

かえるくんは、窓からかたつむりくんを探して、「まだ来ない」と言っていることからすると、わざと4日間の時間を設定するためにかたつむりくんを指名したわけではないようです。ここも「ユーモア」からくる偶然だと思うのですが、かたつむりくんに手紙を届けさせることの意味は考えるべきかもしれません。自分が直接言うのではなく、かたつむりくんに届けてもらうからこそ、手紙に書かれた「きみの親友」や「親愛なる」の本当の意味が、がまくんに届くのだと思います。そんな役割が「かたつむりくん」にはあったのだと考えます。

ただ、そうすると「なぜ、手紙でなければならなかったのか」という疑問も生まれます。口頭でもよいのに、なぜ手紙だったのか。そのことを考えた時に、立ち止まるべきは「題名」です。

題名には「手紙」ではなく、「お手紙」とあります。違いは「お」があるかないかだけですが、この「お」が付くだけで、ぐっと温かいものとして読むことができます。このお話で扱われている「お手紙」は、単なる「手紙」ではなく、「お手紙」でなければならないのです。単なる情報のやり取りではなく、心と心をつなぐ温かなものでなければならないのです。だからこそ、最後には「題名」に立ち戻り、「お手紙」とは何なのかを考えたいと思います。

長々と書きましたが、今回の「明後日の会」で協議した内容の概略はこのようなものでした。脳をフル回転させて、60分間思考し続けることができました。

会終了後には、佐賀大学の達富洋二先生もサプライズで登場していただき、時間を超えて残っていただけた方には、「言葉による見方・考え方」についてのお話をお聞きすることができました。この場をお借りして、達富先生に感謝の思いをお伝えさせていただきます。

会に参加された先生方の感想を、ここに載せさせていただきます。この感想の中で、次回取り扱ってほしい物語名をお聞きしております。次回の第14回「明後日の会では、ご希望挙げていただいた作品の中から選び、教材研究をしようと考えております。次回は10月下旬の開催を予定しております。たくさんのご参加をお待ちしております。

<ご参加いただいた先生方からのアンケート>

・全国各地からの先生方のご意見がうかがえてとても有意義な時間でした。

・国語が専門ではないのですが 素材研究の大切さと面白さを改めて実感しました。ありがとうございます。

・一つの物語にしぼって、教材研究についてお話をお伺いできることを、大変うれしく思います。なかなか自分の周りでこのような研修ができないので、貴重な時間をいただけて、本当にうれし限りです。もし本日のまとめを皆で共有できると、さらにありがたです。本日は、ありがとうございました。

・志ある先生方に混ぜていただき、幸せな時間となりました。遠方からも参加できる機会を創出くださり、有り難い限りです。お誘いくださり有難うございました。

・ズームでの研究会、画期的でとてもよかったです。聞くだけでしたが学びが沢山ありました。次回はぜひ若手の先生にも知らせて広めていきたいです。最後にお話があったように、言葉にこだわる読み方について話す時間は、現場ではなかなか持てないのが現実です。

・夏の研究発表に続いて参加させていただきました。3人の先生のやり取りと参加された先生方のお話から沢山のヒントをいただきました。低学年だと何となく自分の読みをして音読劇をしてしまうところを、問いを投げかけることによって、複数の叙述を根拠にして読めるようになると感じました。あとは、今日のような疑問をどうやって子供たちから引き出すかを考えていきたいと感じました。ありがとうございました。

・「ああ。」に込められた思いが深いことを改めて感じました。言葉と言葉をつないで読みを深めていく授業づくりを目指して取り組んでいきたいと思いました。「お手紙」を深く教材研究されてきた先生方のご意見を伺えて大変勉強になりました。ありがとうございました。また参加させてください。

・ありがとうございました。3人の先生方の問題提起に、まずなるほどと思いました。また、それに対してたくさんの先生方の話を聞くことができて、とても勉強になりました。改めて物語を読むって楽しいなぁと感じたところです。子どもたちともこんな風に言葉にこだわりながら楽しく読めるように、今後も教材研究をしっかり行っていきたいと思いました。



当日はZOOMでの研修会の様子を誰も撮影しておらず、何も残っていなかったのですが、佐賀大学の達富洋二先生が撮影されていた画像をいただくことができました。掲載することにも快く承諾していただきましたので、載せさせていただきます。次回の第14回明後日の会が楽しみです!!たくさんの先生方のご参加をお待ちしております!!

国語科 中尾聡志















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