3つの読書レターで『ごんぎつね』を読む授業~「考えの形成」の力の育成をめざして~

公開日: 2021年1月2日土曜日


明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今回は、2月20日(土)の本校研究発表会にて公開する授業の言語活動についてご紹介いたします。

今回私が考えた言語活動は「3つの読書レターを書く」というものです。

みなさんは、「ごんぎつね」を読んだ時、どのようなことを感じられますか。私がこの物語を読んだ時の子どもたちの姿を創造すると、次のようなことが思い起こされます。


①誰かに「ごんぎつね」の結末について考えたことを話したいな!

②この「ごんぎつね」を読む時には、読んだところまで誰かと少しずつ話しながら読みたいな!

③「ごんぎつね」って題名にひっかかるね。最初この題名を見た時、どんなきつねかなって思ったよ。

④あれ?何回か読み返してみると、わかってくることってあるぞ??お父さんやお母さんもこの物語を知っているって言っていたな。一緒に読んでみたいな。

⑤最初は「兵十は、なんで気づいてあげないの!ごんは一生懸命兵十につぐないをしているのに!つりあわないって言いながらも、翌日に行ってあげたのに!撃ち殺してしまうなんて、兵十はひどい男だよ!!」って思ったけど、ごんがし続けた「つぐない」って、兵十はごんがしたって全く気づいてないんじゃない??

⑥そう考えたら、この物語は、一方的に兵十のことが気になって仕方がないごんが、兵十に間違って撃たれてしまったというお話で、兵十はひどい男だって話じゃないのかもしれないよね?そうしたら、兵十に撃たれたごんって、どんな思いで死んでいったのだろう?


①は誰もが思うことですね。これは「ごんぎつね」という物語が、作品としての強い力を持っているからだと思います。一人でいる寂しさから、村人にいたずらをするごん。でも、そのいたずらは、村人からすると単なるいたずらで終えられない所業です。子どもたちはごんと自分を重ねて、自分の体験を重ねながら、表面的にごんのことを理解していくでしょう。撃った兵十は悪い存在で、償いを続けたごんが、償いを続けた相手に撃ち殺されてしまったと読むのではないでしょうか。その結果、ごんへの同情の気持ちを高めるような読みを創っていくことでしょう。物語全部を読み終われば、「ごんってかわいそうなきつねだね」や「兵十ってなんで撃っちゃうんだろう。私なら撃たないのに」などと、ごんが迎えてしまった結末について、誰かと語りたい、話し合いたい気持ちになると思います。これが「ごんごつね」という物語が持っている作品の力であると考えます。

②の読んでいる途中で、誰かと話し、その内容について共有して読み進めたいという気持ちは、ごんの気持ちの変化が目に見えて分かるからです。いたずら好きなごんが、いたずらをしていた兵十に償いを続ける。しかし、その償いは深く計画されたものではなく、最初は思い付きのようなつぐないから始めていきます。そのつぐないにごんは満足しているのです。ただ、読み進めていくと、つぐないだったものが、つぐないとは思えない行為となり、兵十のかげぼうしにごんは触れるところまで近づいていく。あれほど短絡的だったごんが、兵十がつぐないをしている存在を何と考えるのかが気になり、2時間を超えるお経が終わるまで井戸の側で待ち続けていくのです。そのようなごんに、読み手は共感し、同化して読み進めていくでしょう。そのような読みをしていくと、必ず読んでいる内容にズレが生まれてきます。だからこそ、読んでいる最中でも呼んだことを表現し、交流したいと思うのだと思います。

③の題名にも着目すべき点があります。初読でも再読でも、この「ごんぎつね」という題名には立ち止まるところがあるでしょう。初読であれば「どんなきつねなのかな」という表面的な問いを持ったり、再読であれば「兵十が最後ようやく呼んだ『ごん』という呼び方ではなく、『ごんぎつね』という言葉が題名になっているのはなぜだろう」といった問いをもったりすると考えます。つまり、題名についても語りたい内容があるのです。 

④は、この物語が全ての教科書会社に採用され続けられている物語だということから生まれます。この「ごんぎつね」は小学校の物語の中で最も有名であるといっていい作品なのではないでしょうか。そんな稀有な物語作品を、親とも一緒になって楽しめる機会があるといいなと考えます。

⑤と⑥は、何度も読み返す中で、初読の読みが変わるところです。読めば読むほどその捉えが変わり、その変わった読みを交流することで、物語を読む力が高められると考えます。このような初読の読みとの変化こそが、物語を読む楽しさにつながります。さらに、この物語には、初読の表面的な読みが変化していくように、様々な伏線が書かれている。①の「いたずら」の捉え方が変わること、森の穴の中で数日間誰にも会わないということがどれほどの寂しさか理解すること、兵十がとったうなぎがお母さんのために取ったものだということがごんの思い込みであること等、その意味がわかると読みが大きく変わるという部分がたくさんあります。くりを固めておいていた意味やごんの視点が兵十の視点に変わることなども、それに当たるのではないでしょうか。

このように、この「ごんぎつね」という物語を一読者として読むと,読み味わい方がたくさんあります。本単元で設定すべき言語活動は、これらの思いを満たすことができる言語活動が必要だと私は考えました。そのような言語活動として「3つの読書レターを書く」という言語活動を考案しました。

言語活動を通して、指導事項を身に付けていくということが新学習指導要領の教科目標に示されている内容です。この「3つの読書レターを書く」活動を通して、しっかりと指導事項を身に付けていきます。今回は次の「考えの形成」の力の育成を目指します。

ごんと兵十の行動の理由や気持ちの変化について、場面の移り変わりと結び付けて読んだことを基にして、感想や考えをもつこと。


この「考えの形成」の力は、既習の「構造と内容の把握」や「精査・解釈」の力を生かす必要があります。 子どもたちと3年生の時から身に付けてきた力を生かして、「考えの形成」の力を育成していきます。

この「3つの読書レター」を書くという活動を考える中で、「本の帯」や「本のポップ」を書く活動を思い浮かべました。これらの言語活動では、十分に物語を読んだ人が、物語を知らない人に結末に興味を持たせるような表現を考えながら書くという活動です。どちらも子どもたちは楽しんで活動することでしょう。ただ、これらの活動では、結末について交流した内容が、言語活動に表現されません。つまり、帯やポップを完成させた後,完成させた言語活動を用いて新たな学びを生み出すことが難しいという欠点があると考えます。 

その課題を改善できるように「3つの読書レター」を書くという言語活動を設定しました。これは、物語について読んだことについて、架空の同じ1人の人に、読書レターを3回書くという活動です。同じ人に送るといってもその状態が異なります。「読む前の状態」の人に送る手紙,「クライマックス前まで読んだ状態」の人に送る手紙,「全て読んだ状態」の人に送る手紙の3回なのですが、当然書く内容に違いが生まれてきます。

読む前の状態の人には「題名読み」や「物語をより深く読むために必要な語彙を紹介しておくこと」などを書きたくなるでしょう。クライマックス前までを読んだ状態の人とは、そこまでのごんの行動の理由や気持ちの変化、さらにはごんとは真逆で一切変わらない兵十のごんに対する気持ちについて書き綴っていくでしょう。全てを知った状態の人とは結末についての考えを交流するでしょう。そのような「3つの手紙」を書く言語活動によって、身に付けるべき力を身に付け、物語をよりよく楽しみ、完成させた言語活動を友達や家族とともに楽しむことのできる言語活動としたいと考えました。

このような言語活動はとても難易度の高い言語活動となっていると思います。私が担任する子どもたちとは、この2年間質の高い言語活動を通して、問いを立て、その解決策を考える学びを積み重ねてきました。だからこそ、実現できる言語活動となっていると思います。今回研究発表会で提案する言語活動は、それぞれの子どもたちの実態に応じて、実践していただけるものだと考えております。ぜひ、研究発表会で公開する子どもたちの学びの姿を基に、深い学びを生み出す子どもたちの姿を明らかにしていけるとよいなと考えます。

今年の本校研究発表会はオンラインでの開催となっております。実際に公開する授業動画では、単元開きの授業や単元の中で問いを立て、解決策を考える学びの具体的な姿も公開する予定にしております。2月20日(土)の休日の開催ですので、例年よりも開催しやすくなっております。全国の先生方にご参加していただけることを願っております。当日、新学習し指導要領がめざす子どもの姿について協議できれば嬉しいなと思っております。たくさんの先生方のご参加をお待ちしております。

                                 国語科 中尾聡志
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