第11回 熊大附属小国語授業研究会「明後日の会」開催。今回は「モチモチの木」の教材研究!!

公開日: 2019年12月17日火曜日

11月2日の記念研究会には、たくさんの先生方にご参加いただきました。改めまして、感謝申し上げます。

その記念研究会の次の会となる「明後日の会」となりました。

本校の学校行事などが重なり、開催日が2転3転してしまったことと、学期末の開催となったため、参加されることが難しい状況での開催となってしまったかなと思っておりましたが、これまでの参加の中で最も多い先生方にご参加いただけました。

まだまだ大きな会とまでは言えませんが、少しずつ参加いただける先生方の人数が増えていることに、とてもありがたい気持ちになっております。ご参加いただいた先生方、ありがとうございました。

今回の11回から13回までは、本校国語科の教諭が研究発表会で取り扱う教材の研究を行います。

そのトップバッターが、光村図書3年下の「モチモチの木」を、私、中尾が教材研究していきました。




まず、最初の言語活動アイデアは「図形当てゲーム」を行いました。
(※ 出典:「楽しみながら思考力を鍛える 小学校国語の学習ゲーム集」上条晴夫、菊池省三 編著 2001 39頁~43頁)

これは私が附属小学校1年目の熊本市立黒髪小学校で開かれた熊本県大会の飛び込み授業の授業前のアイスブレーキングとしても行いました。

ルールは簡単で、教師の指示の通りに図を描き、その描いた図が答えと同じ図になると点数が入るというものです。

ゲームの導入では、あえて図を正確に描くことのできない説明で図を描かせます。

「まず、丸を2つ描きましょう。次に三角形を描きましょう。最後に、棒を2本描きます。これで終わりです。」

このような説明で図を描かせると、子どもそれぞれの図ができあがります。
完成した図は雪だるまのような図になるのですが、子どもたちに正解を提示すると、「そんな図描けないよ!」「大きさとか描く場所を言ってよ!」などという声が聞かれます。

そのような状態の子どもたちにだからこそ、「話すとはどういうことか」「聞くとはどういうことか」を語ることができるのです。

話す時には聞き手の立場に立って、自分の説明がきちんと伝わる説明をしなければ伝わらないこと

聞く時にはどんな点に注意して聞けばよいのかということを考えて聞くこと

などをしっかり教えていきます。

県大会の飛び込みの授業は、光村図書4年の「聞き取りメモの工夫」の授業でした。

「話すこと・聞くこと」の授業開始前に、そのような「話すこと」や「聞くこと」への意識を高めておくことで、その後の学びの質も格段に向上していきます。

このゲームは、4人グループを作って、説明した図と同じ図を描くことができた人数に応じて得点していくようなグループ対抗のゲームにすることもできます。

とても面白いゲームですし、朝の短学活でも取り組むことのできるゲームです。みなさん、是非取り組まれてみてください。


言語活動アイデアの紹介の後は、「モチモチの木」の作者紹介を行いました。

作者の斎藤隆介さんは、 1917年(大正6年)1月25日 東京生まれで、北海道や秋田の新聞社で記者として働いておられました。

昭和36年から5年間、日本教職員組合の機関紙「教育新聞」に毎日短編童話を連載されており、この童話の中から半数を選び、さらに「八郎」を加えて、『ベロ出しチョンマ』として昭和42年出版されました。



また、齋藤さんが書いた文章の中に「創作民話」という言葉があります。

伝承民話の豊かさと力強さを大事にしながら、それを超える力をもつものとして、創作民話を書かれています。「八郎」も「ベロ出しチョンマ」も「モチモチの木」も、みんな民話めかしているが、全て齋藤さんの創作なのです。そのような創作民話を、参加の皆さんと教材研究していきました。


この「モチモチの木」は5つの場面から構成されています。それは教科書に行空きがあることや小見出しがついていることなどから、一目瞭然です。

下に光村図書3年下に掲載されている「モチモチの木」の小見出しを載せます。

1「おくびょう豆太」
2「やい、木ぃ」
3「霜月二十日のばん」
4「豆太は見た」
5「弱虫でも、やさしけりゃ」

この物語を読む上で、それぞれの場面がどの視点から語られ描かれているのかということと時制の違いに注意して、読む必要があります。


1「おくびょう豆太」…話者の外の目だけで豆太とじさまを紹介している:文末は現在形
2「やい、木ぃ」…話者の外の目が豆太に寄り添い物語を進める:現在形
3「霜月二十日のばん」…話者の外の目が豆太に寄り添い物語を進める:過去形
4「豆太は見た」…話者の外の目が豆太に寄り添い物語を進める:過去形
5「弱虫でも、やさしけりゃ」…話者の外の目が豆太に寄り添い物語を進める:過去形

1の場面が、話者の外の目で描かれることにより、話者の主観による豆太の臆病さが強調されていきます。話者の語る内容に読み手は自然と納得しながら、豆太はおくびょうな子どもだと読んでいくのです。

また、現在形で描かれるのは、豆太の習慣的に繰り返させられている状態を表すためだと考えます。

過去形で描かれることで、11月20日の午前3時頃の出来事が強調されます。

そのような基本的な物語の構造や設定などを、丁寧に読んでいきました。

その後、次の3つの問いを設定して、参加の先生方とディスカッションしていきました。

①モチモチの木についての描写からわかることは?
②何が豆太を走らせたのか?
③じさまの最後の会話文から読めるものは何か?

①のモチモチの木の描写を抜き出していくと、モチモの木の描写の多くが擬人法で描かれています。そのため、人物の設定でこの、物語は豆太とじさましかいないと読んでいたのに、豆太にとっては、このモチモチの木は、身近な人間のように描かれているのです。そのような視点でこの「モチモチの木」を読むと、また違った読みができるようになります。

②の豆太を走らせたものは何かという問いについては、参加してくれた大学生の意見がとても興味深かったです。「豆太を走らせたものは、豆太の奥底に眠る何かであり、それは出せるきっかっけがなかったからでなかったものだ」という読みを出してくれました。その何かとは「せっちんに行く」などでは出るわけではなく、「じさまの病気」や「じさまを失う怖さ」によって引き出されるものであるというご意見でした。教室全体で話し合ってみると、どの方向にも話が広がっていきそうで、とても面白い話し合いになるかもしれません。

③のじさまの最後の台詞「おまえは」という語り口が2回繰り返され、「~だ」「~だ」「~だ」と強い断定の文末で語られていきます。そして、最後じさまは「は、は、は。」と笑うのです。この笑いの意味もじさまの「安心」と見るか、豆太の「未来」を感じることができたと見るか、もしくは最初から豆太にある勇気をじさまだけは知っており「ほらな、豆太には勇気があっただろう?」という思いや「満足感」などが考えられると思います。この台詞も子どもたちにしっかりと読み取らせていきたいですね。

この他にも、原点である絵本と教科書との表記の違いなどについても触れていきました。


1時間30分の研究会でしたが、やっている私があっという間に進んでいったと感じた会となりました。

たくさんの先生方と一緒に勉強できたことが何よりでした。


さて、次回の明後日の会ですが、次回は1月10日(金)となります。

次回は立松和平さんの「海の命」の教材研究を、本校溝上が教材研究していきます。

小学校最後の物語教材となる「海の命」。きっと深い学びが生み出されるはずです。

たくさんの先生方のご参加をお待ちしております。


別件についての告知ですが、本会「明後日の会」は、九州の他県の研究会とつながりをもって活動を進めております。

佐賀県の「指月の会」や鹿児島の「あくゆうの会」、長崎の「はこべらの会」など様々な会と連携して研究を進めております。

その九州各県研究会が、年に2回一堂に会して研究会を開いております。

その会を「九州教室の声に学ぶ会」という研究会になっております。

これまで長崎大会と佐賀大会を開いており、次回は1月5日に鹿児島大会が開催されます。

この会は、小学校だけでなく中学校の先生方も参加する会となっています。

参加は自由ですので、もし興味のあられる先生がいらっしゃいましたら、下のアドレスまでメールをいただけると参加申し込みさせていただきます。

各県の国語教育に触れることのできる貴重な研究会となっておりますので、ご都合付かれる先生方はぜひお申し込み下さい。

熊本大学教育学部附属小学校 国語科 中尾聡志

メールアドレス:nakaosato.kumafushou@gmail.com
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