【ごんぎつね⑧】DL指導案あり〜気持ちの「変わり目」に着目して読み直す〜

公開日: 2023年12月23日土曜日 「ごんぎつね」(光村図書/東京書籍/教育出版)

  

先に予告です!今回はかなりの長文になるので、とりあえず指導案を、という方はこちらからダウンロード可能です。
もし興味をもってくださったら、続きもお読みいただけると幸いです!

第8時の目標

ごんや兵十の気持ちの転換点について検討する活動を通して、問いを具体化したり、解決方法や言語活動を選んだりしながら、『最後の一通』に向けて自己の学習を調整している。


第8時はいわゆる研究授業の「本時」だったのですが、自分の中で今回はこの目標設定からして大きなチャレンジでした。
何がチャレンジかというと、本時の中心に「主体的に学習に取り組む態度」を据えたことです。

基本的に国語の研究授業では「思考力・判断力・表現力」に関する目標が設定されることがほとんどだと思います。
しかし今回は、一人一人の「粘り強さ」や「自己調整」の姿を見取り、個々の学びをどう支える学習環境をデザインするかにフォーカスしてみました。
そう考えるに至ったのは、「『何をこそ』見取るべきか」「『読む』とは何か」に対する考え方が、少しずつ自分の中で変わってきているからです。

具体的に言えば、「どう読んだか」という結果だけでなく、そのプロセスでどんな問いや困り事が生じ、それをどう解決しようとして、今どんな状態にあるのか、をこそ見取ることが、個々の学びを支える教師の役割の一つなのではないかと考えています。

「主体的に学習に取り組む態度」は、それ単体ではなく、知識・技能を使ったり、それを基に思考・判断・表現したりするプロセスで表出するもののはずです。そのような思いから、本時の学習を構想しました。

主な学習活動

① 本時の見通しを確かめる。
② 全体で話し合い、現時点での問いの解決状況や考えの納得度を振り返る。
③ 個々で活動の取り組み方を選択し、自分の問いを追究する。
④ 本時の学習を振り返り、国語日記を書く。

学びの実際

<学習活動①>本時の見通しを確かめる。

授業冒頭、第7時で取り組んだ『最後の一通()』の納得度とその理由を振り返り、ペアやグループで話す時間を取りました。すると、着目する叙述を明確しながら問いを具体化していく姿が生まれました。兵十の変化に着目した8班を取り上げます。

ゆいな:私は、ここの文…216(行目)とか「ぬすみやがった」とか悪いイメージだった。うってやる、やってやるみたいな気持ちだったけど、気付いた時は、なんでうってしまったんだったじゃないかなって。とうわ:その後に兵十はびっくりしていて…

かいと:ここら辺にも、気付いて…

ゆいな:やっぱ違う気持ちかな…気付いた瞬間から…(本文を読み返し始める)

かいと:(気持ちの変化を指で表そうとする仕草)

ゆいな:ここでは「ぬすみやがった」ということは、狐が悪いことしに来たんじゃないかって思って、ようしって、やってやるとかうってやるみたいな気持ちだったかもしれないじゃん。でも気付いた時なんでやってしまったみたいな。だから違うかな。



<学習活動②> 

全体で話し合い、現時点での問いの解決状況や考えの納得度を振り返る。


その後、第6場面を中心に個々が着目している叙述を取り上げながら板書上に付箋紙を貼り、心情の転換点を視覚的に捉えやすくするとともに、それを「変わり目」という言葉で共有しました。
すると
「それなら初めと終わりが一番傾いているんじゃない?」
「2〜3場面で変わっていそう」




などの発言が続きました。

それを基に「変わり目に注目して気持ちの変化を読む」という読みの方略を共有した上で、一人一人が注目した「変わり目」でどんな変化が起こっているかを追究していく場を設定しました。


<学習活動③> 

個々で活動の取り組み方を選択し、自分の問いを追究する。

「兵十はなぜくりを持ってきたごんをちゃんと見なかったのか?」を追究していたりくとくんたちのグループでは、第6場面の場面の様子について個々の認識にずれが生じていました。

そのずれを埋めようとする対話の中で、「見取り図を描く」という新たな解決方法が生み出されていきます。以下は、その際のやり取りです。


兵十の家の見取り図を描きながら話し合う子どもたち

りくと:隠れてやっていたから、あんまり見えなかったんじゃない?
ふうま:多分だけど、(挿絵を見ながら)この絵的に(兵十は)部屋にいるじゃん。土間ってさ…「ようし」ってところで意気込みあるってさっき言ったじゃん。ごんのことしか頭になかったでしょ。だから栗があることに気付かなくて…
れいし:えっ、気付いているじゃん。
ふうま:いつもはここに来るけど、この日は土間に来たから…
けいし:わかった!場所が違うから…(中略)
れいし:気付いているじゃん。「ぬすっとぎつねめ」って言ってる。
りくと:いるのは気付いているけど、だから…(図を描き始める)
ふうま:これ、上から見た図?
りくと:ここに兵十がいたら、ここに栗を置いたから、この壁で見えなかったんじゃない?
れいし:ここら辺でうったでしょ。それでこっちに行ったから栗に気付いたんじゃない?


このように、りくとくんたちは個々の捉えにずれが生じたことをきっかけに、兵十の家の見取り図を描きながら、叙述に立ち返ってイメージを具体化していました。


8班のゆいなさんは、前時まで別のグループに参加して話し合いを中心に解決しようとしていましたが、この時間は即興劇グループに参加していました。前時の振り返りを見てみると、「兵十の第6場面での心情が分からないから、次は劇をしてみようかなと思います。」と綴られていました。このように、「解決できない」「分からない」という状態を一度通っているからこそ、自分の問いが切実になり、いろいろな解決策を試そうとする姿が生まれたのだと思います。
「ばたりと取り落としました。」の瞬間を演じる子どもたち

さらに、物語全体での兵十の変化を捉えようとしたすずこさんは、似た問いの友達と「うらみメーター」と名付けた方法を考え出し、各場面の心情の転換点を捉えていっていました。
 すずこさんたちが開発したうらみメーター

<学習活動④>

個々で活動の取り組み方を選択し、自分の問いを追究する。


本時の後半では、一人一人が自分なりの方法で、自分なりの問いを解決していっため、それぞれの考えを全体で共有する場は設けませんでした。
その代わりに、「今の問いの解決状況は、『ごん・兵十からの返事』を書けそう?それとももう一度『ごん・兵十への手紙』でおたずねする?」と問いかけ、誰の立場から、どの手紙を書くかを選ぶように促しました。
(※『手紙』の選択については、こちらのブログで詳述しているので、よろしければご参照ください。)


上の写真は、なおこさんの手紙と国語日記です。

手紙の文章自体は短いですが、振り返りの記述とセットで見ると、なおこさんにとって「『こいつはつまらないな』と言っていたのに、どうしてまだおわびをしていたのか」という問いが切実なものになっていったことがわかります。

このように、活動の視点や解決方法を選択できるようにしたことで、問いや次への見通しを明確にしながら自己の学びを調整する姿へとつながったと思います。

長文にも関わらず、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、最終回の予定です!

国語科 溝上 剛道









  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A

0 件のコメント :

コメントを投稿