光村図書6年下「笑うから楽しい」を使った単元の導入

公開日: 2016年5月27日金曜日


前回の内容で,教科書のリード文にある2つの言語活動について書きました。




挙げられている事例に気を付けて,筆者の考えを読み取ろう。

筆者の考えに対する自分の考えを,具体例を挙げて発表しよう。




このような事例と主張のつながりを意識して読んだり,

筆者の考えに対する自分の考えを,

具体例を挙げながら思考したりする子どもの姿は,

教師の手立てなしには生まれてきません。




教師の意図的な手立てを通して,
リード文にあるような子どもの姿を生んでいく必要があるのです。
ここでの「創意工夫する手立て」にこそ,

授業者が授業を楽しむポイントがあるのではないでしょうか。



今回は,単元の中心教材である「時計の時間と心の時間」のセット教材「笑うから楽しい」の導入の仕方についてご紹介します。




「笑うから楽しい」を使って,筆者の考えと事例のつながりを読み取らせるにはどうしたらよいのか?




まず,この説明文の構成からです。

この文章は双括型の構成,
つまり,最初と最後に筆者の主張が書かれてある文章となっているのです。



説明文の要旨を捉え,筆者の主張を読み取るためには,
序論と結論のみを読めばわかる構成になっているのです。



そこで,教材文をパソコンに入力し,
本論に書かれた筆者の用いた事例を隠した状態でプリントアウトして、
子どもたちに提示しました。具体的には次の通りです。


この序論と結論だけの文章,

つまり筆者の主張のみで書かれた文章を読んで,

子どもたちはどのような反応をしたと思いますか?


その時の板書が次の通りです。



一読後,私は「この文章を読んで,なるほどと思えるか,納得できないか」を尋ねました。
私のクラスは38人なのですが,



なるほど派   ・・・ 18人

納得しない派  ・・・ 20人



と,ほぼ半数同士に分かれました。

それぞれの意見は次の通りです。



<なるほど派>

 ・悲しいときに泣き,楽しいときに笑うというような経験が自分にもあったので,なるほどなと思えた。

 ・無理矢理楽しもうとしても楽しめなくて,楽しいときには自然と笑顔が出てきて,悲しいときには自然と泣いている。自分が遊園地に行った時,筆者が言っているようなことと同じことがあった。

 ・やっぱり心の動きが体に表れる。楽しいときには,やるぞという気持ちになって,はりきってやりきることができるし,悲しいときにはそれができなくなる。



<納得しない派>

 ・最後の一文に「何かいやなことがあったときは,(略)鏡の前でにっこりえがおを作ってみるのもよいかもしれません」とあるけど,そんなことをしても楽しくならないと思うし,おかしい。

 ・「うれし泣き」というのがある。泣きながら嬉しい気持ちになることがあるのではないか。だから,納得できない。



どちらの理由にも一理あります。

それは,それぞれの派の子どもたちの意見を分析すると,次のようになるからです。



なるほど派の子どもたちは,

主張しか書かれていない文章を,

自分の既有の体験を使って補いながら,筆者の主張を読むことができている。



反対に,

納得できない子どもたちは,

事例をもとに説明されていないため,筆者の主張を共感的に受け止めることができないでいる。



この2つの派に分かれて話し合いを進めていくと,「中間派」が生まれてきます。

今回の授業で言えば,

序論は納得できるが,結論は納得できないという子どもたちです。



筆者の主張から一歩進んだ「筆者のメッセージ」(最後の一文)を,

受け取ることができないために起こってくるのだと思います。

それは全て,事例をもとに筆者の主張がなされていないことが原因なのです。



ここまでの話し合いを通して,

どうしてこのような納得できる,できないの違いが出てきたのか問い返しました。



子どもたちは,話し合いを通して,文章の中で筆者の主張が,きちんと説明されていないのだということに,気付いていきました。

そして,説明文を読むには,やっぱり筆者の主張だけを読むのではなく,
事例とつなげて読まなければ,伝えたいことは読み取れないんだということを,
セット教材の「笑うから楽しい」を読む学習を通して,気づいていったのでした。



この気づきの後,子どもたちに全文を渡し読み取らせました。



授業後に書いた国語日記は以下の通りです。



・ 私はなるほど派です。なぜかというと,例えば楽しいところに行ったとき,自然と笑顔になれるし,元気になれるので,筆者の考えに私は賛成です。あと,びっくりしたのが表情によって,呼吸が変化するということです。これから笑顔でいることを心がけたいです。



・ 最初は,前半しか納得できなくて,鏡の前でにっこり笑顔になるは,ちょっと納得できなかったけど,本当の文章を読んだら,実験,脳の動き,血液の流れ,その変化によって楽しい気持ちになるという文が追加されていて,その実験で参加者は,自分が笑っていると気づいていなかったけど,自然とゆかいな気持ちになっていた。その時,脳は今笑っていると判断しているってことから,鏡に映った笑顔の自分を見れば,おだやかな自分になれるんだなと思った。



・ 私は笑うから楽しいのではなくて,「楽しいから笑う」ではないか、と思っていました。でも,筆者は実験をしました。しかも,それは自分自身で行ったのではなく,ほかの人にさせたので,「その考えは本当なのかな」と思えるようになりました。「私もその実験を友達といっしょにやってみたいな」と思いました。



・ 主張だけの文だと,筆者の考えしかないように感じるが,事例のある文では,実験のことが書かれていたから,納得できる人は増えたと思う。いっけん,訳の分からないことを書いているように見えるが,深く考えれば考えるほど,「確かに!!」って思う。自分の体験もあるから,より納得できる。



・ ぼくは最初は事例がなかったとき,前半はなるほどと思っても,後半は納得できなかったけど,事例があると理由や実験などを使って説明することによって,わかりやすくなり、なるほどと思うようになった。ぼくは,今日事例を書いただけで,わかりやすくなるんだと思った。ぼくも文章を書く時は,事例をつかってしっかり相手に伝わるように書きたいと思いました。



・ 最初の方は,まあ納得できるけど,最後の「何かいやなことがあったときは,このことを思い出して,鏡の前でにっこりえがおを作ってみるとよいかもしれません。」というのが,ちょっとだけ無理やりじゃないかなと思います。私はいやことがあったら,誰かになぐさめられるがいっぱい泣かないと収まらないので,いやなことがあったら,鏡の前で笑顔を作るというのはあまり納得できない。



・ 心と体の動きが密接に関係しているという所などの,前半は納得できるが,何かいやなことがあったら,鏡の前で笑うなどの後半は納得できなかったが,実際に実験で参加者がゆかいな気持ちになったことや,血液の温度や空気などの,理論的な考えもあるから,今のところは迷っているが,どちらかというと,納得できない方の考えが大きい。





最終的な子どもたちの意見の人数として,



・筆者の主張に納得できない派・・・10人

・中立派・・・5人

・筆者の主張に納得できる派・・・23人



となりました。最後の一文にやっぱり引っかかっている子や主張と事例を関係づけて読むことで,納得できるようになった子など,話し合いを通して新たな気づき・発見を得る学びができたと考えています。



この「笑うから楽しい」を通して気づいた「読み」を基にして,中心教材「時計の時間と心の時間」を読み進めていこうと考えました。



詳細については,次回に書こうと思います。
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