光村図書3年上「どきん」の詩を読む授業

公開日: 2019年6月17日月曜日

6月14日(金)の県小国研アイデア発表会にて、詩を読む授業のアイデアを提案させていただきました。

今回はアイデア発表会でしたので、模擬授業形式で参加された先生方と一緒に詩を読んでいきました。

大人が集まり、1編の詩をみんなで読む・・・

非日常的な状況でしたが、参加の先生方全員が詩を読むことに向かえたあの瞬間は、「圧巻」でした。

私も模擬授業をしていて、楽しかったです。

今回はその時の様子をご紹介させていただきます。


私が模擬授業したのは谷川俊太郎さんの詩「どきん」でした。

この詩は光村図書3年生上にある「詩を楽しもう」の単元で扱う学習材として掲載されています。

出典は1983年理論社から出版されている「谷川俊太郎少年詩集 どきん」です。

擬声語や擬態語がたくさん使われていて、音読するととても楽しい学習材です。

クラス替えのあった3年生が初めて出合う詩として、とても適している詩になっていると言えるのではないでしょうか。

この「どきん」という魅力ある学習材を使って、子どもたちに「詩を読んで想像したことが表れるように音読できる力」が身に付く授業を考えました。

まず、私は「どきん」の詩を次のように書き換えて、参加者の先生方に提示しました。


 どきん    
         谷川俊太郎
 

さわってみようかなあ つるつる

おしてみようかなあ つるつる

もすこしおそうかなあ つるつる

もいちどおそうかあ つるつる

たおれちゃったよなあ つるつる

いんりょくかんじるねえ つるつる

ちきゅうはまわってるう つるつる

かぜもふいてるよお つるつる

あるきはじめるかあ つるつる

だれかがふりむいた! つるつる



この書き換えた詩を、3年生の子どもたちに提示すると、口々に「面白い詩だ!」や「つるつるばっかりだ」と言い出します。

けれど、教室の一人の子どもが気付きます。

「『かぜもふいてるよお つるつる』 っておかしくない?」
「『たおれちゃったよ つるつる』 もおかしいよ。」
「よく考えると『つるつる』っておかしいよ。」

最初は詩の中の擬態語・擬声語を単語として楽しんでいたのですが、他の言葉と関連付けて読ませることで、そのつながりのおかしさに気づき始めます。

そんな問いや疑問を持たせた後、本時の学習課題を提示します。


詩を読んで想像したことが表れるように音読する力を身に付けるために、
詩の中の言葉を関連づけて読み、
谷川俊太郎さんの「どきん」を完成させよう。


この学習課題は、45分で取り組むミッションのような課題となっています。

<身に付けるべき言葉の力(指導事項)><思考操作(思考の仕方)><言語活動>の3つのフレーズから作る学習課題です。

教室の全ての子どもに言葉の力をつけるために設定する学習課題です。

この3フレーズで作る学習課題設定の理論は、佐賀大達富洋二先生にご指導いただいております。


さて、この学習課題を設定した後、私は次のように話しました。

「今、みんながおかしいって言ったのは、『つるつる』という言葉と、その上にある言葉をつなげて考えたんだね。学習課題にある「言葉を関連づけて読む」とはそういうことだよ。」

と説明します。子どもたちに明示的に「関連付けて読む」ということを説明し、言葉の読み方を教えていきます。

その後、黒板に「つるつる」に入る擬声語・擬態語をカードにしたものを貼り、それぞれがどこに入るのかを考え、谷川俊太郎さんの「どきん」を完成させる活動に移っていきました。






ワークシートを見ていただくとわかるとおり、今回は10個の「つるつる」に対して、8個の擬声語・擬態語を用意しました。

子どもたちに提示すると、やっぱりこのことにも気付き始めます。

「8個しかないから、何も入らない『つるつる』があるんだ。」
「2個は『つるつる』なのかな?」
「先生は残り2つには3文字の言葉が入るって言ってるよ?」
「え?最後じゃない?最後なんだから、題名の『どきん』じゃない?」
「じゃあ、あと1つはどこかな?」

そんなことを話しながら、子どもたちは脳みそで汗をかきながら、「どきん」の詩を完成させていきます。

「『さわって』ってあるから、最初が『つるつる』だね。だって触った感じだもの。」
「たぶん『つるつる』だから、石とかじゃない?」
「いや、あらったりんごだよ。」
「ぼくは、新品のタンスだと思うよ。」

「『かぜもふいてるよお』は、ぜったい『そよそよ』だよ。」
「『あるきはじめるかあ』は『ひたひら』かな?『みしみし』かな?」

「『たおれちゃったよなあ。』の後は、『ゆらゆら』かな?『ぐらぐら』かな?それとも『がらがら』?」
「でも、『ゆらゆら』だと、まだ倒れてないでしょ?この手の上に乗せたマジックみたいに、『ゆらゆら』している時は、まだ倒れてないよ。だから、『たおれちゃった』だったら、倒れているから、ここには『ゆらゆら』は入らないよ。」

などと発言をつなぎ合わせながら、「どきん」の詩を完成させていきました。

今回、模擬授業の様子をご紹介していますが、この授業は本校の3年次教育実習生の前で授業したものです。

そのため、教育実習生が使用している指導書で使われている文言にする必要があったので、指導事項が現行の学習指導要領の文言になっております。

実際の授業では、45分では時間が全く足りなかったのですが、子どもたちが考えた「どきん」と谷川俊太郎さんが考えた珠玉の「どきん」を読み比べて、音読に表していこうとしたところで45分が過ぎていきました。

それでも、150人ぐらいの教育実習生に囲まれながら、子どもたちは一生懸命、谷川俊太郎さんの詩に向かっていくことができました。

その姿がとてもまぶしかったです。


模擬授業の様子に戻りますが、参加の先生方も少しずつ明らかになる「どきん」の詩に、真剣に思考してくださいました。

最後、本校国語科の田邉が「どきん」の詩を完成させ、谷川俊太郎さんの「どきん」と読み比べをする時には、子どものような表情で詩と向き合ってくださいました。

さらに素晴らしかったのは、県の研究部長である馬原先生の音読でした。

誰よりも言葉と言葉を関連づけて味わい深く音読してくださいました。

自然と拍手が生まれたあの瞬間は素敵でした。

最後の模擬授業についてのご質問では、元本校副校長であり、現在平成音楽大学で専任講師をなさっている榅山範夫先生「空欄にしてそこに入る言葉は何なのかという授業はよくある。でも、全部を「つるつる」にした授業はあまり見ない。なぜ、全部を「つるつる」に変えて提示したのか?」という本質を突いた質問をしてくださいました。

このようなご質問をして下さる榅山先生に感謝しております。

私の意図は「つるつる」と他の言葉とのつながりの悪さから、関連づけて読むということを意識させたかったということをお話しさせていただきました。

模擬授業も楽しい、詩を読むことも楽しい、質疑応答も楽しい、そんな素敵な時間を過ごすことがっできました。

このようなアイデア発表会は、毎月第3金曜日に行っております。次回はイレギュラーなのですが、7月5日(金)18:30~本校附属小学校会議室で行います。

国語の授業を少し考えてみたいなと思われた先生方は、誰でもご参加していただける会になっております。

たくさんの先生方のご参加をお待ちしております。

本時の展開案だけJPEG画像で載せさせていただきます。

お読みいただけると幸いです。



熊本大学教育学部附属小学校 国語科 中尾聡志
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