登場人物の関係に着目して読み,人物の生き方について話し合おう『海の命』~3つ作品を重ねて読む~

公開日: 2017年2月20日月曜日


本時が単元最後の授業です。

第1時から子どもたちは,この「海の命」を読み進め、自分なりの読みを創り上げてきました。そんな子どもたちに、太一の生き方を自分がどう思うのかを語り合う「海の命交流会」を開きました。これまで読んできた太一の生き方についての自分の考えを、思うままに語り合う,そんな時間を計画しました。

しかし、そのまま交流していても,子どもたちの読みは簡単には深まりません。そこで、既習教材の「ごんぎつね」と「大造じいさんとガン」を提示し、兵十と大造じいさんと太一の生き方を比較したり、関連づけたりしながら語り合えるようにしていきました。下に簡単ではありますが、3つの物語のつながりについての児童の発言を載せます。



児童 人間と生き物の命の関係。  

T 例えば,「ごんぎつね」や「大造じいさんとガン」だったら?

C 「ごんぎつね」だったら,兵十とごん。「大造じいさんとガン」は,大造じいさんと残雪。

T そうだね。それもあるんだけど,他の観点はないかな。

児童 命の話がある。

児童 全部の物語に対決するシーンがある。 

児童 生命のつながり。

T なるほどね。ありがとう。いろいろ出てきたね。実は、この3つの作品は,「うつ/うたない」でつながっているの。

C ああ,そうか。 C そういわれるとそうだ。



この後,「ごんを撃った兵十」「残雪を撃たなかった大造じいさん」「瀬の主を殺さなかった太一」ということを板書してまとめ,それぞれの「うつ/うたない」は同じか違うかを尋ね,それぞれが違うものになっていることを確認した。3人の生き方を比べたり,つなげたりしながら,太一の生き方を自分はどう考えるのかをノートにまとめさせ,話し合いに進めていった。

 下に1つのグループの話し合いの様子を載せる。このグループの話し合いを全体の前で再現させ,どう考えるのかについて話し合わせていった。


児童 僕は太一の生き方はよくなかったと思います。だって,今まで頑張ってきたのに,殺さないなんて,僕には絶対にできない。

児童 いや逆に,海の命であるクエを倒したいという自分の思いを,クエをお父さんだと思うことで守ったってことだから,すごいことだと思いませんか。

児童 私も桂君に似てて,クエをずっと殺したいって思っていたんだけど,殺す前におとうとか母とか与吉じいさが思い出されて,殺さないという決断をしたのはすごいと思うけど。

T みんなはこの3人の話し合いについて,どう思うのかグループの人と話し合ってみましょう。



話し合いの中で,3つの作品を関連づけて読むために,太一が討たなかったこととごんを撃ってしまった兵十の生き方とを比べられるように,兵十の生き方について考えられる問い返しをした。その後,3人の生き方をつなげて考えながら,それぞれの生き方の違いが生まれた原因を明らかにしていき,国語日記を書く活動に進めていった。既習教材を生かしながら,本単元の学習材である「海の命」の太一の生き方について深く考えられるようにしていった。単元最後の国語日記を下に載せる。



児童 今まで普通に読んでいた「ごんぎつね」や「大造じいさんとガン」を「海の命」とつなげて読んでみると,いろいろな気づきがあった。例えば,ごんをうった兵十はうつ前に何も考えずに撃っていて,大造じいさんは残雪の行動を見て考え,太一は心の中の変化で討たなかったというような,物語の中でもちゃんと命について考えないといけないと思った。

児童 兵十は自分の過ちを反省できる人,大造じいさんはひきょう者ではない人,太一は恩返しができて,命を大切にしている立派な人だと思います。



この単元を通して,子どもたちに比較したり,関連付けたりしながら読む方法を,子どもたち同士の対話の中で身につけさせられる授業を構想していった。3つの作品を重ねて読む読み方の可能性を十分実感することができた。より子どもの読みを豊かに広げていくことのできる対話の在り方を検討し,「主体的で,対話的で,深い学び」を起こすことのできる授業の在り方を今後も検討していきたい。
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