第5回熊大附属小国語授業研究会「明後日の会」開催!!

公開日: 2019年6月10日月曜日

5月17日(金)熊大国語授業研究会の第5回目を開きました。

今回は、6年生の物語文「カレーライス」(光村図書)の教材研究を行いました。

この物語は重松清さんが書かれた1人称視点の物語です。

主人公である「ひろし」の視点が書かれており、

ぼくは、悪くない。

というひろしの心情を表す地の文から書き始められる物語です。

6年生という多感な時期の子どもたちに、この物語は「自分と重ね合わせて読む」という読み方を自然とさせてくれる物語です。

今回も参加していただいた先生方と、このカレーライスをいかに読むかを教材研究していきました。


この教材を通して、身に付けさせたい力は「登場人物の相互関係や心情の変化」を読む力です。

中心人物の「ひろし」のお父さんに対する心情も、この物語の中で大きく変化します。

また、ひろしとお父さんの関係も、物語の中で大きく変化します。

そのような心情の変化と相互関係を、行動や心情などの描写やそれぞれの会話文を関連づけて読み取っていくことが、この学習材を通して身に付けていくことが求められます。

まず、この「カレーライス」の物語が4日間のお話だということを確認しました。

「お父さんウィーク前日」「お父さんウィーク初日」「二日目」「三日目」と進んでいきます。

その中での心情の変化と相互関係を読んでいきます。

この「時の設定」は、みんなわかっているようで、ずれている時があります。

どの子にも「設定を読む力」を付けるためにも、「何日間なのか」「なぜ4日間だと考えるのか」は考えさせたいポイントです。

教科書を使うならば、場面は分かれてあります。しかし、本学級では関連付けた読みが生まれやすいように、本文を一枚のプリントに打ち込んだものを使っております。そのため、「なぜ4日間だと考えるのか?」ということが立ち止まりのポイントになるのです。


次に、この物語の中にある1人の読者として共感できるポイントを共有していきました。参加された先生方からは、次のような部分が紹介されました。

確かに、一日三十分の約束を破って、夕食が終わった後もゲームをしていたのは、よくなかった。だけど、セーブもさせないで、いきなりゲーム機のコードをぬいて電源を切っちゃうのは、いくらなんでもひどいじゃないか。確かに、一日三十分の約束を破って、夕食が終わった後もゲームをしていたのは、よくなかった。だけど、セーブもさせないで、いきなりゲーム機のコードをぬいて電源を切っちゃうのは、いくらなんでもひどいじゃないか。
 ・・・お父さんの行動に納得できる部分はあるが、やはりひろしと同じ気持ちでひどいと思うから。
 
ほら、そういうところがいやなんだ。ぼくはすねてるんじゃない。お父さんと口をききたくないのは、そんな子どもっぽいことじゃなくて、もっと、こう、なんていうか、もっと―――。 ・・・ダッシュの部分の説明できない自分の気持ちがあるところが共感できる。
 
言いたかったけど、言えなかった。
 ・・・自分にも同じような経験があり、お父さんに言いたいけれど、言えない気持ちがあったことがあるから。
 
「おまえ、もう『中辛』なのか。」  ・・・自分の成長に気づいていないことがあったことが、自分と似ている。

同じような物語を読んでいても、ひろし側に立つ人もいれば、お父さんに共感的に寄り添ってこの物語を読む人もいました。

この「カレーライス」の物語は、ひろしの支点で書かれているため、同年代の小学校6年生が読むと自分と重ねて読むという経験ができる学習材です。

ただ、物語をどのように読むかは子どもそれぞれであり、お父さんの立場からもこの物語を読もうとする子どももいます。

そんな子どもたちにどのような言語活動を設定すると言葉の力が付けられるのでしょうか。
その例を研究会後半にご提案していきました。。

研究会では、この後「この物語を読む上で、どこを読ませるべきか」について話し合いました。

時間の都合上、私の方から「最後の一文『ぼくたちの特製カレーは、ぴりっとからくて、でも、ほんのりあまかった。』をどのように読むとよいのか?」を提示し、考えてもらいました。

参加の先生方からは、大きく分けて次の2種類の意見が出されました。

①「ぴりっと辛くて」が成長したひろしを表し、「ほんのり甘かった」がお父さんとの関係を表している。
 
②この一文は「二人の距離感」を表しているのではないか。つまり、ひろしの今を表している。

授業をしてみると、子どもたちからはこれらの読みは出てくるものです。

これらの読みをどう扱っていくとよいのでしょうか。

研究会の中では、

〇「ぼくの」特製カレーなのではなく「お父さんの」でもない。「ぼくたちの」であるため、①の読みの妥当性は少し難しくなるのではないか。
 
〇最後の一文を「ひろしの成長」と見るのか、「ひろしとお父さんの関係性」と見るのかで、読みが変わってくる。どちらも妥当性のある読みである。
 
〇他の叙述と関連づけて考えていくべき。そう考えると、「ぼくたちの特製カレー」と対応する言葉として「今までの特製カレー」に関する叙述がある。その叙述は2ヶ所ある。この叙述を「ひろしとお父さんとの関係性」の観点かから見ると、次のような読みができる。
 
・・・A:ふつうのカレーだと、一晩おくとこくが出ておいしくなるけど、特製カレーのあまったるさは変わらない。
・・・B:自分でもこまってる。なんでだろう、と思ってる。今までなら、あっさり「ごめんなさい。」が言えたのに。もっとすなおに話せていたのに。特製カレーだって、三年生のころまでは、すごくおいしかったのに。
 
Bの叙述は「今までの特製カレー」についてである。「甘口」をこれまでのひろし、「中辛」を今のひろしと読むのであれば、「甘さ」とは、あっさりごめんなさいが言えていたひろしと、もっと素直に話せていたひろしとも読める。つまり、「ほんのり甘かった」とは、そのような今までのひろしとお父さんの関係であり、「ぴりっと辛くて」は今のひろしとお父さんの関係である。

下の写真にある通り、たくさんの関連付けができました。

研究会の最後に、この「カレーライス」をより深く読み、言葉の力を付けられる言語活動として、昨年度開発した「もしも、ひろしとお父さんの交換ノートがあったなら。『お父さん、あのね・・・』『ひろし、あのね・・・』」の言語活動を紹介しました。

4日間で進められる「カレーライス」の物語の中で、もし、ひろしとお父さんとの交換ノートがあったなら、どのようなやりとりをするのかを、ひろしとお父さんの役割になって、実際に交換ノートを作りながら、ひろしとお父さんの相互関係や心情の変化を読み深めていくという言語活動です。

詳細につきましては、昨年度の本校研究紀要に掲載しております。

興味を持っていただけた先生がいらっしゃいましたら、下記のメールにてご連絡ください。

詳細をご説明させていただきます。(nakaosato.kumafushou@gmail.com




さて、今回で第5回の授業研究会となりました。

会の名称も、「熊大附属小国語授業研究会『明後日の会』」として、活動を進めていくことになりました。

ブログには掲載してきれていない気づきや発見がたくさんあります。

この会には、大学生の方から初任の先生、中堅の先生、ベテランの先生 までいろいろな先生方が参加されています。

今日でもなく、明日でもない、明後日の国語の授業、これから求められる国語の授業を実現するための研究会を実施しております。

始まったばかりの、まだまだ若い研究会です。

お気軽に参加できる会となっております。

次回の第6回「明後日の会」は6月28日(金)に実施いたします。

内容は、今回同様小学校6年生の物語文教材を扱います。場所と期日は以下の通りです。
たくさんの先生方のご参加をお待ちしております。

第6回熊大附属小国語授業研究会「明後日の会」

期日:6月28日(金)
時間:18:30~20:00
場所:熊本大学教育学部附属小学校会議室

熊本大学教育学部附属小学校 国語科 中尾聡志
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