【もったいない!】教材研究〜『スイミー』はもっと“具体”を読むべきだ!!〜

公開日: 2024年5月30日木曜日 「スイミー」(光村図書2年上) 教材研究

–––「スイミー」の主題と言えば?

思い浮かぶのは「協力」「成長」「個性」などではないでしょうか。

鶴田(1995)[1]は,この作品の主題には様々な捉え方があるとした上で,「仲間がみんなで力を合わせることの大切さ」「主人公が悲しい体験を乗り越えて集団のリーダーとして変化・成長したことのすばらしさ」「一人ひとりの個性や資質のちがいが仲間全体の力を高めることになること」の三つがその最大公約数的なものだとしています。

どの読みも妥当なものであり、読者論に立つならば、当然どれか一つに収斂させる必要もないでしょう。実際、多様な解釈を引き出す先行実践は多数あります。

しかし、です。
私は、低学年という学年段階を考えたとき、

「スイミー」はもっと“具体”を読むべきだ

と考えます。

理由は二つあります。

①絵本「スイミー」の魅力と教科書教材化に伴う問題

絵本「スイミー」は、教科書に収録されるにあたって以下の変更がなされています。[1]

・挿絵の大幅なカット
・文末の変更、助詞の補充、接続詞の省略
・文の順序変更・追加 等

それにより、本来もっている絵の魅力、「めくる」という行為とともに感じられる時間の経過などが薄れてしまうという問題が生じています。

特に、「すばらしいもの」との出会いの場面は、光村図書版では「にじいろのゼリーのようなくらげ」の挿絵のみになっています。私は、この「すばらしいもの」との出会いにこそ、この作品の魅力が凝縮されていると考えています。

すなわち、絵本ではページをめくるたびに新たな生き物と出会い、スイミーが時間をかけて少しずつ元気を取り戻していったことが実感できるようになっています。

もったいない!
そう思います。

また、絵があることで、一つ一つの描写を基に、より具体的に、場面の様子や人物の行動を想像することに繋げることができます。この点については、②で述べたいと思います。

②低学年文学「精査・解釈」の指導事項

「場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像すること」
この指導事項と照らしたとき、低学年で経験べきは、先に挙げた主題のような抽象的な読みではなく、もっと具体的な場面の様子や人物の行動についての想像です。

例えば、先に挙げた「すばらしいもの」との出会いの場面で言えば

・「にじいろのゼリーのようなくらげ」はスイミーからどのように見えたか?
・その時、スイミーはどんな様子だったか?(どう感じたか?)

などを想像していくことが重要だと考えます。
しかし、これまでは、ほとんどの先行実践で教科書教材がそのまま使用され、なかなか“具体”に目が向けないまま、抽象的な読みを中心とした授業になってしまうことが多かったように思います。

やはり、もったいない!!

以上の2点から、「スイミーはもっと“具体”を読むべきだ!」「絵本『スイミー』の可能性をもっと活かせるはずだ!」という考えのもと、単元を構想していきました。

では、“具体”を読むためには、どのような活動がよいのでしょうか?
ありきたりかもしれませんが、私は「演じる」ことが最も適していると考えます。

ただし、単なる「劇化」とはちょっと違う「なってみる学び(演劇的手法)」[2]を大切にしています。 


その具体については、次回からのブログで、授業の様子を交えつつお伝えしていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

国語科 溝上 剛道



[1] 鶴田清司(1995)「『スイミー』の〈解釈〉と〈分析〉」明治図書
[2] 〈参考文献〉渡辺貴裕、藤原由香里(2010)「なってみる学び 演劇的手法で変わる授業と学校」時事通信社



 


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