「主体的な学び」を生み出す「学習の見通し」とは?〜「単元 太一のモノローグ『海の命』(光村図書6年)」⑥−2〜

公開日: 2020年3月8日日曜日 「海の命」(光村図書6年)


















前回から,研究発表会「単元 太一のモノローグ『海の命』」についての授業リフレクションをシリーズで紹介しています。

全3回とお知らせしていたのですが,思いの外長くなってしまいましたので,「子どもの学びの実際」については,数回に分けてお届けしたいと思います。

今回は,「学習の見通し」についてです。


子どもが「学習の見通しをもつ」とはどのようなことを意味するのでしょう。


指導案上ではよく「…というめあてを提示し,学習の見通しをもてるようにする」とか,「〜のように課題を焦点化し,見通しをもたせる」などの文言を目にします。

一般的に「めあて」や「課題」は,次のような意味で用いられることが多いかと思います。

めあて:「〜しよう」などの行動目標。
課 題:「〜だろうか?」などの問いの形。

仮に,上の定義で考えた時,めあての提示は「今日は何をすればいいのか」という活動の見通しをもたせる効果があります。
また,課題の提示は,「何を考えればいいのか」という解き明かすべき問いが明確になります。

しかし,本気で「主体的な学び」を実現していこうとするのならば,「今日は何をすればいいのか」「何を考えればいいのか」こそ,子ども自身に考えさせたいものです。

なぜなら,「提示」の主語は「教師」です。

また,「子ども」が,板書された「めあて」や「課題」をノートに書き写したとして,あるいは大きな声ではきはき読めたとして,それらは「見通しをもてた」指標となるでしょうか。

もちろん答えは否でしょう。

では,どうするのか?

鍵となるのは「“問いの発展”のモデリング」「『見通し』についての話し合い」です。


⑴ 「時間的見通し」と「“問いの発展”のモデリング」


まず,「単元の学習課題」「学習計画」を基に,『太一のモノローグ』(単元で取り組んでいる言語活動)の構成メモ完成まであと2時間という時間的見通しをもたせます。
(↑)学習計画

次に,「前時の振り返り」で本時の見通しまで立てられている子どもを紹介します。
いわゆる「モデリング」です。

前時までに,多くのグループでおおよそ『太一のモノローグ』の構成メモを書けてきていました。
ただし,文章中から根拠をもって書けてはいるものの,物語の全体像から捉えると矛盾がある考えものや,あらすじをまとめたようなモノローグになっているものもありました。
特に,9班については以前のブログ(「千びきに一ぴき」から生まれた読みのずれ)でも紹介した通り,全体像から捉えると矛盾があるものの,自分たちの読みに固執しているところもありました。

 そこで,「わたしの問い」を発展させ,『太一のモノローグ』の構成メモを見直す見通しをもっていたあんりさん,ゆうと君の振り返りを紹介しました。





















あんり:太一が追い求めている夢は何かを考えて,その時63行目に「実現するものだ」とあって,もともと考えていた「おとうのかたきうち」ではないことがわかって,そのほかに考えていた「一人前の漁師」になりたかったのでは?と話し合いました。でも,太一は大魚を殺さないと一人前の漁師になれないと言っていたので,違うことがわかりました。それで,91行目には村一番の漁師が太一あることが分かって,そのあと,村一番の漁師と一人前の漁師の違いがわからなかったので,次に解決したいと思いました。



あんりさんは「追い求めている夢とは?」という問いを解決してわかったことを他の文と結びつけ「『村一番の漁師』と『一人前の漁師』はどう違うのか」というように問いを発展させていました。


ゆうと:前回の授業では,あんりさんと似ているところなんですけど,「一人前の漁師になるためには?」と「千びきに一ぴきとは?」ということの意味を考えていきました。その途中に4班の人(あんりさん)が「太一の夢は何なのか?」という問いをあげてくれていて,そこから「一人前の漁師」と「千びきに一ぴき」の2つの問いが解決したので,太一の夢をもっと深く考えて冒頭のモノローグにつなげて考えることができるようにしていきたいと思います。

ゆうと君は「夢とは?」という4班の問いを「そこから」というように自分の問いにつなげて考えたり,そこで解決したことを冒頭のモノローグにつなげたりして,太一がどう語るかまで見通しをもっていました。


⑵  各グループでの「見通し」についての話し合い



この二人を紹介した後このように投げかけました。

T:あと2時間で自分の『太一のモノローグ』をよりよくするために,それぞれたくさん問いを立てていたと思うんだけど,この問いを解決すれば,絶対自分たちのモノローグがもう一歩よくなるという見通しを立てて,活動に入りましょう。



以下は9班の見通しについての話し合いです。














さりあ:(モノローグの構成メモを指差しながら)まずこことここが分かんないでしょ。ここをやって,時間が余ったら…
ともこ:なんか,全体のズレ
さりあ:ズレっていうか,変えるところを変えていって,より良いものにしていく…
ともこ:あの「千びきに一ぴき」の言葉の意味の解釈を二通り作ってみる。二通りでもあんまり変えるところないけど…
し の:例えば?
まさき:例えば,あんりが言っていた一人前の漁師と村一番の漁師の違い
ともこ:それはもうなんか分かったけど,村一番の漁師の具体的な意味が分かんない。一人前の漁師は瀬の主をとったらなれるって考えて。
し の:村一番って何みたいなさあ。
ともこ:じゃあそこを一旦考えて, ここの部分を  
まさき:おとうは村一番…
ともこ:おとうが村一番の漁師っていうのを,太一が思うのを具体的に言葉で表して,それを通して山場の部分の村一番の漁師から一人前の漁師になる…一言で言うと山場の意味を捉えて,そして全体像
し の:それが見通し。


ともこさんの「全体のズレ」「言葉の意味の解釈を二通り作ってみる」という発言から,全体像から自分たちの考えを見直そうとしていることが伺えます。

これは,前時で異なる解釈に出合わせていたことによるでしょう。

ここで,まさき君が「あんりが言っていた…」と発言します。
あんりさんの問いを解決することで,「千びきに一ぴき」の解釈を見直すことができると考えたのでしょう。

さらに「村一番の漁師の具体的な意味」「村一番って何」「おとうは村一番」「太一が思うのを具体的に言葉で表して」「一言で言うと…」など,それぞれの子どもが言い換えたり,付け加えたりしながら「何を明らかにしていくべきか」の見通しを立てていっていました。

他のグループでも,9班と同様に自分たちが「何を明らかにしていくべきか」「そのためにこの時間に何をするか」について話し合い,それぞれが問いの解決に取り組んでいきました。





「それぞれが問いの解決に取り組む」と言うと,「じゃあ,別々のことやってて全体では何やるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

次回は,各々のグループで異なる問いを解決していく学びの文脈の中で,「全体はどうするか?」について述べていきたいと思います。


国語科 溝上 剛道
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