「単元 太一のモノローグ『海の命』(光村図書6年)」⑥ 〜本時の構想(指導案)〜

公開日: 2020年3月3日火曜日 「海の命」(光村図書6年)



















いよいよ研究発表会の授業(第6時)について紹介していきたいと思います。

今回から

①  授業構想(指導案)
②  子どもの学びの実際
③  授業の考察

の3本立てでレポートしていく予定です。
単元全体の構想と単元びらきから前時までの学びの実際(第2時第3時第4時第5時)については,これまでの記事をご参照ください。

では,早速,第6時の授業構想についてです。



1 単元名 物語の全体像を捉え,ショートムービー『太一のモノローグ』を創ろう(「海の命」光村図書6年)
 
2 単元について
本単元では「海の命」を学習材として取り上げる。中心人物太一が様々な人物とかかわりながら葛藤し,成長していくこの物語は,既習の「心情の変化」「相互関係」「人物像」等を読む力を総動員しなければ,その全体像を捉えることはできない。本単元を通して,6年間で身に付けてきた力を駆使し,何度も叙述に立ち返りながら,「物語の全体像」に対する考えを再考していく粘り強さを身に付けていってほしいと願う。
そこで,本単元では『太一のモノローグ』(太一が自身の経験を語るショートムービー)という言語活動を核にした単元を構想する。このモノローグでは,一人一人が太一になりきり,「これは〜の物語だ」と語り出すところから始めることで,物語の全体像をどう捉えたかを端的に表せるようにする。さらに,その後に登場人物や山場についての語りを入れ,再度語り出しの言葉を再考する場を設定することで,全ての子どもが自分の捉えた人物像や山場での変化を関連付け,物語の全体像を捉え直していけるようにしていく。

3 単元の目標
⑴ 語句と語句との関係,語感や言葉の使い方に対する感覚を意識して,語や語句を使うことができる。
⑵ 物語の全体像を,登場人物の相互関係や心情の変化,人物像と関連付けて,具体的に想像することができる。
  粘り強く物語の全体像を想像し,学習課題に沿って問いを発展・更新しながら,ショートムービー『太一のモノローグ』を創ろうとしている。

4 指導計画
学習活動
主体的・対話的で深い学びを生み出すための教師の支援
時間
1 単元の見通しをもつ。





  初読で一人一人が捉えた物語の全体像を,モノローグの語り出し「これは〜の物語だ」で表現させ,全体像についての問いを立てられるようにする。
<学習課題>物語の全体像を,心情の変化や相互関係,人物像を関連付けてとらえ,人物の生き方が伝わるショートムービー『太一のモノローグ』を創ろう。
2「わたしの問い」を解決しながら,『太一のモノローグ』を創る。
○  複数の叙述と関連付けたり,人物像を表す語彙を問い直したりして「わたしの問い」を更新・修正している子どもを価値づけ,自らの学習の調整を促していく。
○  モノローグの構成メモを作りながら,「これは〜の物語だ」という語り出しの言葉に立ち返らせていくことで,それぞれの人物像や山場での太一の変容を関連付けて,物語の全体像を捉え直していけるようにする。
本時
3 学習課題の達成度を振り返る。
○  構成メモやショートムービーを見合わせ,各班がどのように物語の全体像を捉えたかを交流できるようにする。
○  評価問題として「いのちシリーズ」(立松和平)のショートムービの脚本を書く活動に取り組ませ,物語の全体像を捉える力を振り返れるようにする。

5 本時の学習
⑴    目標
「村一番の漁師」「本当の一人前の漁師」をどう語るかを検討する活動を通して,それぞれの人物像を関連付けて物語の全体像を捉え直し,『太一のモノローグ』を再考することができる。
⑵    展開
学習活動
主体的・対話的で深い学びを生み出すための教師の支援
1 各班でこれまでまとめてきた『太一のモノローグ』を振り返り,本時の見通しをもつ。
太一は,「村一番の漁師」「本当の一人前の漁師」をどんな漁師と語るだろう。



 2「村一番の漁師」「本当の一人前の漁師」とはどんな漁師かについて話し合う。







3 それぞれの人物像と関連付けて,自分たちの『太一のモノローグ』を再考する。








4 本時の学習を振り返る。
○  全体像を表す言葉に「村一番の漁師」「本当の一人前の漁師」を入れているものの,それがどんな漁師かを具体的に言い表せず悩んでいる子どもを取り上げる。その上で,各班での「村一番」「本当の一人前」についての捉え方のずれを明らかにしながら物語の全体像を捉え直す見通しをもたせる。
○  自分が解決してきた「わたしの問い」とつなげて考えるように促し,これまでモノローグを創る中で着目してきたおとうや与吉じいさの言動,そこから読み取れる人物像と関連付けて考えられるようにする。
○「村一番」「本当の一人前」が出てくる叙述は下記の4つである。一人一人の子どもがどの言葉を基に考えたかを明らかにしながら発言させることで,「与吉じいさの考える『村一番の漁師』とは?」「おとうはどんな『村一番の漁師』だったか?」「太一はどんな漁師を『本当の一人前』と考え,それはどう変わったか?」などに対する読みを関連付けながら,「村一番」「本当の一人前」の言葉の意味を捉え直す考え方を共有していく。
・「自分では気づかないだろうが,おまえは村一番の漁師だよ。」(P.204,L9
・これが自分の追い求めてきたまぼろしの魚,村一番のもぐり漁師だった父を破った瀬の主なのかもしれない。(P.209,L10)
・この魚をとらなければ,本当の一人前の漁師にはなれないのだと,太一は泣きそうになりながら思う。(P.210,L9)
・太一は村一番の漁師であり続けた。(P.211,L8)
○  構成メモの一部分の検討になっているグループには,その部分を基に「これは〜の物語だ」というモノローグの語り出しに立ち返らせることで,自分たちが捉え直した人物像や山場での変容を関連付けて,物語の全体像をどう表すかを再考していけるようにする。
○ 人物像や物語の全体像を表す言葉を書きかえていたグループに,なぜそのように考えたかを語らせる。そのグループがどの言葉に着目し,どのように考えていったかを価値づけることで,読みの結果だけでなく,その思考過程を見直しながら,言葉への自覚を高めていけるようにする。
【評価】物語の全体像を,それぞれの人物像と関連付けて捉え直し,『太一のモノローグ』を再考することができる。
(ワークシート,観察)
○  本時の中で,自分たちが書き換えようと思ったモノローグはどこか,それはどうしてかをペアと話した上で振り返りを書くようにすることで,言語活動を通してどの言葉に立ち止まり,どのように考えたかを自覚できるようにする。

多くの先行実践では,「なぜ太一は瀬の主をうたなかったのか。」を解き明かしていく授業が多かったと思います。

本学級でも,多くの子どもがそこに問いをもっていました。

しかし,本時では,そこから一歩引いて「物語の全体像」を俯瞰的に捉えるために,「村一番の漁師」と「本当の一人前の漁師」の違いについての問いを取り上げました。

詳しくは,次回のブログ「子どもの学びの実際」の中でご説明したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


国語科 溝上 剛道

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