たずねびと【第1時】(光村図書5年)
公開日: 2025年6月25日水曜日
こんにちは。
本校4年目になりました。国語科の木下です。
今年は初の5年生を担任しています。
本校4年目になりました。国語科の木下です。
今年は初の5年生を担任しています。
今回は「たずねびと」の実践を紹介させていただきます!
学習材&単元紹介
本学習材「たずねびと」は、朽木祥による戦争文学です。物語は八つの場面によって構成されており、綾の一人称視点で描かれています。
そのため、子どもたちは、本教材を読み進める中で、同姓同名の「楠木アヤ」という名前との出会いから始まる綾の旅を追体験することができます。作者の朽木祥はこの物語を綾が戦争で亡くなった人々に「共感共苦」する物語であり、読者が綾に共感することで戦争について考えるきっかけとして欲しいと語っています。物語の全体像を捉えるためには、登場人物や場面設定、ここの叙述を基に、その世界や人物像を豊かに想像することが欠かせません。
そこで、本単元では物語の中で綾が出会ったものや人、繰り返し出てくるものの役割を暗示生の高い表現と関連付けて考えることを通して、綾の戦争に対する考え方や心情がどのように変化していったのかを具体的に想像することを通して、物語の全体像を具体的に想像する力の育成を目指していきます。
そこで、本実践では『たずねびと紀行文』という言語活動を設定しました。物語の最後の場面を基に、主人公「楠木綾」がこの旅を「どのような旅だった」と感じているのかを考えることで、物語の全体像と根拠となる叙述やその理由について紀行文に書くことができるようにしていきます。
その際、自分が旅の名前の理由として着目した叙述やその出会いが綾の心情の変化にどのように関わっていたのかを話し合うことで、繰り返し出てくるものや人、登場人物が経験したことが物語において、どのような役割があるのかを考えたり、暗示生の高い表現が登場人物の心情の変化をどのように表しているのかを想像したりしていくようにします。
「何が書かれているか」という内容面だけではなく「どのように描かれているのか」という表現面にも着目して読むことで、物語の全体像を具体的に想像することができるようにしていきます。
長くなってしまいましたが、それでは、第一時の紹介です。
第1時の目標
「たずねびと」の範読を聞きながら感想を交流することを通して、最後の場面の挿絵を基に、「綾にとってこの旅はどんな旅だったのか」について考え、初めの考えをもつことができる。
主な学習活動
① 読書活動「私の推し作品」の中から「ずっと、ずっと、大すきだよ」を紹介し、「僕
にとってのエルフとの日々」を考えることで、本時の課題をつかむ。
② 範読を聞き、感想を交流する。
③ 最後の挿絵を基に、綾にとってこの旅がどのような旅だったのかを考える。
学びの実際
〈学習活動①〉既習教材から言語活動のイメージを掴む
単元の初めには、読書家の時間で行った「私の推し作品紹介」の中から、既習教材「ずうっと、ずっと、大すきだよ」を取り上げ、「僕がエルフとの日々振り返ると、どんな日々だった」いうかを子どもたちに問いました。
本単元の指導事項は「物語の全体像を想像する」ことですが、物語全体を通して考える経験は、子どもたちにはほとんどありませんでした。そのため、物語全体を考えるとすると、どうしても「あらすじまとめ」のようになってしまいます。そこで、「たずねびと」と同じ一人称視点であり、子どもたち全員が再読であるこの作品を活用して、全体を通して考えるイメージをもつことができるようにしよう思いました。
(以下、子どもの名前は全て仮名です)
〈推し作品紹介後〉※少し感想を交流する中で
しん:エルフとの生活の中で、少しずつ動物を
好きになっていったんじゃないかな
T:もし、みんなが僕だったらエルフとの日々を何て言う?
ゆう:楽しかった
そう:忘れられない
T:もう少し具体的に言える?近くに人と話してみて。
むぎ:一緒に毎日いるから「絆が深まる日々」
T:最後の挿絵とは少し違う感じがするね。
あい:友達として、家族として楽しめる日々だった。
T:エルフとの出会い、出来事を通してそう考えたのかな
そう:エルフが悪さをして、怒られたり遊んだりして
T:じゃあ、この物語はエルフとの楽しい
思い出の日々の物語?
CC:いや、エルフなくなっているから
T:じゃあ、そこまで含めると、どう?
せな:エルフがどんどん弱っていくから、
命の大切さを感じる物語。昔は元気でたのしか
たったけど、少しずつ弱っていくから命の尊さを感じると思う。
子どもたちは「僕」とエルフとの経験から、物語を表す一言を考えていました。その中には、僕がエルフとの日々を通して、どのように変わったのかを捉えている言葉を表出していました。
〈学習活動②〉範読を聞いて、綾にとってどんな旅だったのかを考える
本学習材「たずねびと」も綾の一人称視点で描かれており、「ずうっと、ずっと、大すきだよ」と同様に、最後の場面で登場人物が物語を振り返る描写があります。その特徴を生かして、「綾にとってどんな旅だったのか」を子どもたちに問いました。
〈範読を聞いた後〉※少し感想交流の後
T:読んでどうだった?なんか、じんわりしてるね。
そう:何て言えばいいか、分からない。
不思議な話かなとも思ったけど、まだ言葉にできない。
じん:戦争の恐ろしさは、じんわり伝わってくるけど、ちょっと薄れてる。
戦争の話とはちょっと違う気がする。
T:今までの戦争のお話といえば、「ちいちゃんのかげおくり」
わく:命がなくなる物語では、ちょっと違う
けん:そうくんが言うように、色々混ざっている。
戦争のお話のイメージが強かったな。
T:ちょっと、戦争のことが印象に残った感じなんだ。
しん:夢に出てくるくらい気になってた?
まい:自分の名前が載ってたら、あれ?とか
戦争で亡くなったいると、もやもや。絶望って感じ。
じん:絶望ではない。
T:最後の場面のこのシーンは、絶望とは違う?
C:悲しい
C:切ない。悲しいではない。
T:何とも言葉にしづらい感じだね。
広島での旅を綾ちゃんはどんな旅だったと感じる?
けん:人々が死んでどんな思いをしたのか
たか:原爆の恐ろしさを知った旅
C:恐ろしさは違う
しん:原爆の凄さを知る旅だった
ゆい:なんか違う
けん:恐ろしいって感じのラストではない
いち:P125にもう一人の綾ちゃんが迎えに
きてくれたよってあるから、迎えにきた旅
しん:最後に恐ろしいことを忘れないでいたら
かい:考えてるだけなんじゃない?学んで、
その恐ろしさを考えてる
T:ポスターとの出会いから始まったこの旅を
綾ちゃんはどんな旅だった言うのかな。
記録を付けるとしたら、なんて書くのかな。
初めに、既習教材で物語全体を通して考えることを経験したことと綾の視点から物語を考えたことで、「戦争は怖い」という安易な解釈に流れず、子どもたちからは「それだけではない」という思いが生じていました。
〈学習活動③〉言語活動に取り組み、最初の考えをもつ
最後に子どもたちに、現時点での考えをICT端末に書き込みました。まだ、旅の名前しか付けられていませんが、子どもたちが読み深める中で、どのように全体像を捉えていくのか、これからの学びが楽しみです。いくつかの振り返りを紹介します。
では、第二時へと続きます。
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