【実践紹介①】「一つの花」~ゆみ子目線で「一つの花」は書きかえられるのか?~
公開日: 2024年9月21日土曜日
「一つの花」の一時間目です。
この時間は、子どもたちが初めて「一つの花」に出会う時間です。誰が語っている物語なのかについて話し合いながら、登場人物の気持ちが語られていないことに気付き、どの登場人物目線ならよりこの物語を味わえそうかを考えていきます。
【第一時の目標】
「一つの花」を誰目線で書きかえられそうかを考えることを通して、人物の設定や場面の移り変わりなどに着目し、単元や活動の見通しをもつ。
【実際の授業の様子】
①冒頭の二文を読み、物語への想像を膨らませる。
初めて「一つの花」という作品に出会う子どもたち。そんな子どもたちに、冒頭の二文(「一つだけちょうだい。」これがゆみ子のはっきりおぼえた最初の言葉でした。)を提示しました。この二文を全体で音読するとさっそく子どもたちは喋り始めました。
C:すごい。
えりな:ふつうは最初の言葉って「ママ」とか「パパ」とかだけど、「一つだけちょうだいって」難易度が高い
C:たしかに。
T:長い文章を覚えたのがすごいってこと?
かずお:「一つだけ」って言葉が・・・なんか・・・すごい。
C:そうそう。最初に覚える言葉にしてはすごい。
T:みんなは「ママ」とか「パパ」とかの言葉をいつおぼえたの?
C:1歳くらい。2歳くらい。
T:じゃあゆみ子って何歳くらいかな。
C:1歳から2歳くらいじゃないかなあ。
えいと:そのくらいなら「もっとちょうだい。」とか「たくさんちょうだい。」って言いそうなのに、「一つだけちょうだい。」っていうのが、なんか考えられない。
あきら:最初に覚えた言葉なのに「一つだけ」って限定してるのは不思議。
このように冒頭の二文について話し合いながら、ゆみ子の年齢やその年齢の子が「一つだけ」という言葉を使うことへの違和感を確かめていきました。
②誰視点で語られている物語なのかを確かめる。
範読後、子どもたちの物語への感想を聞きながら、十年の年月が流れ平和になったことやゆみ子が成長したことなどの簡単なあらすじをまとめていきました。その後、この物語が誰視点で書かれているのかを投げかけました。
T:この物語って誰目線の物語?
C:ナレーター?ゆみ子?みんな?
(グループで話し合う時間をとる)
いくみ:ナレーター目線だと思います。今までの文章はセリフが多かったけど、この話はセリフが少ないからです。
C:たしかに。
みちお:僕は全員目線だと思います。なぜなら、ゆみ子もお父さんもお母さんもしゃべっているからです。
けいた:みちおさんが言っているのはセリフだけど、セリフとは違って、今回のお話にはあんまり気持ちが出てきていないからナレーター目線だと思います。
C:ああ~。なるほど。
C:気持ちがないと、だれの目線か分からないよね。
まどか:最後の場面でも、ゆみ子はお母さんに向かってしゃべっているけど、お母さんからの言葉も気持ちも書いていないから、そこが引っかかりました。気持ちが書いてあったら読みやすいのに。
このような話し合いをしながら、ナレーター目線(語り手目線)の物語であること、そして登場人物の気持ちが描かれてないことを確かめていきました。
③どの登場人物目線で物語を書きかえるかを話し合う。
登場人物の気持ちを語るために、その登場人物になりきって物語を書きかえるという言語活動を設定しました。学級では、この活動のことを「変身作文」と呼んでいます。子どもたちは、作家の時間などを使って変身作文には取り組んでいたため、「気持ちを語るために変身作文を書く」という活動には前向きな様子でした。そこで、どの登場人物なら書きかえられそうかを投げかけました。
T:誰目線なら書きかえていけそう?
C:お母さん。お父さん。ゆみ子。全員出来そうじゃない?
T:じゃあ、もしゆみ子で書きかえるとしてどの場面だったら書きかえられそう?
(グループで考える時間をとる)
T:ゆみ子の気持ちを一番語れそうな場面はどこだろう。
だいち:僕は四の場面だと思います。ゆみ子はここで、泣いたりしているから気持ちが語れそうです。
せいら:私も四の場面です。このお話で一番大事な場面だと思うし、気持ちが語りやすいと思うからです。
T:他の場面が語りやすいって人いますか?
ひさこ:私は、五の場面です。なんでかっていうと、一~四の場面はゆみ子はまだ小さいから、気持ちも語れないんじゃないかと思うけど、五の場面は成長してるから語れるんじゃないかと思います。
C:あ~、なるほど。それもあるなあ。
C:いや、それでも語れると思う。心を語ればいい。
(この後、ゆみ子目線で語れるかどうかの話し合いが続く)
子どもたちは、十年の年月が流れゆみ子が成長していることや一~四の場面でのゆみ子は幼いことには納得していましたが、それでも気持ちは語れるのではないかという子と幼いゆみ子では語れないという子に分かれていました。しかし、どちらの意見にもそれなりの根拠があり、お互いの意見を言い合うだけの時間になってしまいました。そのため、この時間ではそこに結論を出すことはせず、父や母目線に話を移しました。
T:今ずっとゆみ子で話してるけど、決着つかなそうだね。ちょっと話題変えるけど、お父さんやお母さん目線ならどこ書きかえられそう?
C:お母さんは全部の場面いけそうじゃない?
C:お父さんは、最後は出てこないから無理そう。
T:今、最後はお父さんが出てこないから無理そうっていう意見があったけど、どう思う?
しんじ:お父さんでも書けると思います。二の場面に「大きくなって、どんな子に育つだろう。」と言っているから、天国からゆみ子を見たお父さんで語れると思います。
C:なるほど。それでも書けそう。
C:えっ、それだと作り話みたいになるんじゃない?
子どもたちは、母目線ではすべての場面の書き換えができると感じたようですが、父目線では最後の場面をどうするかで意見が分かれました。ここで時間が来たため、この時間は終了となりました。
子どもたちは、「登場人物になりきって書きかえることで、気持ちを語れるのではないか」という見通しをもちました。しかし、本当にゆみ子や父目線で書きかえられるのかについては、まだ意見が分かれている状態です。
そこで、次の時間は、四の場面をゆみ子になりきって書きかえる活動に取り組みます。実際に書きかえる活動をしながら、意見を整理していきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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