【実践紹介②】「一つの花」~誰目線ならこの物語をよりよく語れるか?~

公開日: 2024年9月23日月曜日

 「一つの花」の二時間目です。

 前時では、「登場人物の気持ちを語るために登場人物の視点から物語を書きかえる」という言語活動を設定しました。本時では、実際にゆみ子目線から書きかえを行うことで、言語活動の内容を整理していきます。

【第二時の目標】

 ゆみ子視点からの書きかえを行いその書き方について検討することを通して、言語活動の内容を明確にすることができる。

【実際の授業の様子】

①前時を振り返り、ゆみ子目線で四の場面を書きかえられるか考える。

T:ゆみ子目線ならどこを書きかえられそうなんだっけ?

C:四の場面。五の場面。

えりな:四の場面がやりやすいと思います。だって、この場面は泣いたり欲しいといったりしてたくさん感情があるじゃないですか。だから、四の場面が書きやすいと思います。

かんた:僕はゆみ子では書きづらいと思います。だって、まだゆみ子って小さいじゃないですか。だから、難しいと思います。

えいと:つなげるんですけど、まだゆみ子は赤ちゃんだし喋れる言葉が少ないし、なんて書けばいいかが分からなくなると思います。

C:確かに。それもあるね。

きょうこ:私は書けると思うんですけど、ゆみ子は泣きました。とかゆみ子の台詞が結構出てくるから書きやすいんじゃないかと思います。

C:え~、でもなあ。

C:めちゃくちゃ簡単に書きかえられます。

 ここでの子どもたちの意見は二分しました。そこで、実際に個人で考えて書きかえる活動に移っていきます。


②実際にゆみ子目線で書きかえてみる。

 子どもたちはタブレットを使ってゆみ子目線の書きかえを行います。ここでは、スムーズにどんどん書き進めている子となかなか書き進められずに手が止まっている子、書けてはいるもののなんとなく納得できていない子などの姿が現れました。

③二つのゆみ子目線の書きかえを比較し、活動を整理していく。

 個人で考える時間を設定した後、二つの書きかえを取り上げて板書しました。

(1)「一つだけちょうだい。」お父さんもういなくなってしまうかなあ。かなしいよ。あれ。お父さんいなくなった。どこにいったんだろう。あっ、お花をもらった。一つだけの花、お父さんだと思って大事にするね。

(2)はらへった。おにぎりくう。一つだけ、一つだけ。おにぎりたべたい。たべたい。たべたい。あれ?パパがいない。あっ、ぱぱがこっちにくる。やったー。花、花。やったー。パパありがとう。


T:この二つの変身作文読んでみてどう思った?

C:内容は似てる。書きたいことは同じ。

まどか:私も、内容はおなかすいたとか花をもらってうれしいとかを書きました。それはみんなも同じだと思うんですけど、二つの作品を比べると、表現のしかたが違うんじゃないかと思いました。

T:なるほど、表現の仕方が違うんだね。じゃあ、みんなこの二つならどっちのほうがよく書きかえられてると思う?

しろう:私は(2)の方がいいと思うんですけど、小さい子ってあんまり難しいことは考えられなくて、ずっと同じことばっかり考えているだろうから、(2)がいいと思いました。

C:あ~、確かに。

きょうこ:ゆみ子は1~2歳くらいだったから、単純な気持ちしか言えないんじゃないかと思いました。

C:でも、(1)の方もいいと思います。

みちお:(1)はゆみ子の気持ちがちゃんと書いてあって分かりやすい。

こうた:(1)の方がゆみ子の気持ちがちゃんと書いてあって、ゆみ子の目線がより分かりやすい。

せいら:(2)はそのまま思ったことを書いてあるけど、(1)はゆみ子の気持ちを想像しながら書いてある。

T:みんなの考えをまとめると、(1)はゆみ子の気持ちを想像しながら書いていて、(2)はゆみ子になりきって書いてる感じということだね。

C:だからゆみ子に近いのは(2)の方だと思う。

T:じゃあ、この(1)ってさ、誰がゆみ子の気持ちを想像してるんだろうね。

C:読んでる人じゃない?

T:こういう一歩引いた書き方を読者視点で書きかえるということにしようか。

 ゆみ子の書きかえを比べながら、ゆみ子に本当になりきると書きかえがしにくいこと、しかし一歩引いて読者視点としてならゆみ子も語れるということを確認していきました。とても大事な場面だけど、ゆみ子はきっと何もわかっていない何も思っていないんじゃないかということが見えてきました。

④この場面を語るなら誰目線なのか考える。

T:ゆみ子だと語りにくいことが分かったね。じゃあ、誰ならこの場面をよりよく語れるんだろう?

C:お父さんじゃないは絶対語れると思う。

けいた:僕はお父さんだと思います。この題名って「一つの花」じゃないですか。この場面でお父さんが一つの花を渡したから、その時の気持ちを語れると思います。

C:あ~確かに。題名からも考えたんだ。

T:お父さんはみんないけそうな感じなのね。お母さんはどう?

C:え~、難しいんじゃない。

かずお:この場面ではお母さんの気持ちも少ないし、行動も少ないから難しいかも。

えいと:お母さんの気持ちはここではあんまりないから、前の場面から考えないといけないし難しいと思います。

えりな:私は語れると思います。お母さんは確かに行動はしてないけど、お父さんやゆみ子を見ながら考えていたと思います。

T:なるほど、行動がまったくないのか。じゃあ、ちょっと場面を整理してみていい?誰か前に来て、この場面を演じてくれる?

(代表の子がこの場面の劇をする。)


T:どう?この時のお母さんの気持ち語れそう?

C:幸せになってね。とか泣き止んでよかったね。は言えそう。

C:え~、でも立ってるだけだからわからなくない?


 

 第二時を通して、「ゆみ子目線では語りにくいこと」「お父さんが一つの花を渡したときの気持ちは語れるのではないかということ」「お母さんは語れるかどうかまだはっきりしないこと」「読者視点から見た書きかえもできるのではないかということ」などが整理されていきました。そこで

①「お父さん目線」「お母さん目線」での書きかえを中心としていくこと

②読者視点で書きたいことがあるときは「執筆メモ(振り返り)」に書いていくこと

以上の二点を子どもたちと共有しました。

 次回は、お父さん、お母さん目線での書きかえを行っていきます。


最後まで読んでいただきありがとうございました。



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