【実践紹介⓪】「一つの花」教材分析と単元構成

公開日: 2024年9月20日金曜日

 本校1年目の廣田 健生と申します。本年度は4年1組の担任をしております。

今回から数回に分けて、「一つの花」での実践を紹介させていただきたいと思います。


(1)教材「一つの花」の特徴

本教材「一つの花」は今西祐行によって書かれた反戦平和文学です。今西は「作曲家が創造した音楽が、すぐれた演楽家によって演じられたときはじめて完成するように、文学作品も、すぐれた読み手の中においてはじめて完成する。」という言葉を残しています。作品は読み手の中においてはじめて完成するという立場に立つ今西の作品は多くを語りません。それは、「一つの花」においても同様です。

「一つの花」は三人称客観視点で書かれており、語り手がどの登場人物にも入り込まないという特徴をもっています。また、「ゆみ子の泣き顔を見せたくなかったでしょうか。」のように、読み手に問いかけてくる文末表現があることも特徴的です。そうした特徴から、登場人物の気持ちの想像しずらさもありますが、語り手が全てを語らないからこそ、読み手である子どもたちに自分なりに想像することや解釈する余白が与えられている教材でもあります。

図1

 

(2)児童の実態

本学級では作家の時間という活動に日常的に取り組んでいます。作家の時間とは、子どもたちが感じたことや考えたことを自由に書く時間です。子どもたちは、この作家の時間が大好きで、とくに自分が考えたオリジナルの物語を書くことに楽しみを感じている子が多くいます。子どもたちの作品の視点に目をむけてみると、一人称視点で書かれている物語が多く、その作品の中では登場人物の気持ちやその変化がありありと書かれています。このことから子どもたちは、自分が作り出した主人公に同化し、気持ちを想像しながら、文章を書いていることが分かります。


(3)本実践の主張点

 前述した教材の特徴と児童の実態から、本単元では「視点を変えて書きかえる」活動に取り組みます。

 子どもたちは、「一つの花」を読み、この物語が語り手目線で書かれていることや登場人物の行動は書かれていても気持ちは書かれていないことに気付きます。そこで、登場人物の中からなりきる人物を一人決め、選んだ人物の視点から「一つの花」を書きかえていきます。登場人物になりきって物語を書き換えていくことで、子どもたちは自然と登場人物の気持ちや関係などを語るのではないかと考えました。

 しかし、物語すべてを書き換えるとなると負担が大きくなります。そこで、今回の実践では、クライマックス場面(お父さんが一つの花を渡し戦争に行ってしまう場面)と最後の場面(十年後のゆみ子が買い物に出かける場面)に焦点化し、その場面を書き換えていくことにします。この二つの場面を語るには、「戦時中との比較」や「父と母のゆみ子への愛情」、「父が一つの花に込めた思い」などを考えていく必要がでてきます。そのために、子どもたちは自然と前の場面にもどりそれぞれの登場人物の視点から物語を捉えなおしていくと考えました。

 なお、この活動は首藤が提唱している「翻作」を参考としています。翻作とは、何らかの原作を基にした表現のことです。首藤(2023)は翻作について「翻作するためには、原作をより丁寧に読むことが必要になる。その結果読みが深まる。(省略)翻作は、表現・理解総合の学習法であり、文化の継承と創造に役立つ学習法でもある。」と述べています。つまり翻作とは、表現活動を通した精読であると言えるものです。


 次回からは、子どもたちがどのように視点を変えて書き替える活動に取り組み、その中で登場人物の気持ちを想像し、理解していったのかを具体的な授業の場面と共に紹介していきたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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