たぬきの糸車 3時間目 ~やまおくの一けんやだから寂しいんだよ~
公開日: 2025年10月14日火曜日
たぬきの糸車3時間目です。
前時では、実習生にたぬきの糸車の素敵なところを伝えるために「たぬきやおかみさんの行動の理由を書く」「不思議なところを解決して書く」という視点を見いだしていきました。
本時は、設定の場面を取り上げ、「なぜたぬきがいたずらをしにくるのか」をホットシーティングをしながら想像していきます。その際大事にしたい学びは「場面の様子を詳しくすること」です。本時の実際を紹介します。
【学習活動① 自分たちが不思議だと思っているところを出し合う】
子どもたちは本文シートに不思議なところを付箋で貼っています。本時は、どこに付箋を貼ったのかを出し合うところから始めました。
子どもたちから出てきた不思議を以下に示します。
・どうしておかみさんは、あっと驚いたのか。
・なぜ、たぬきはぴょんぴょこ踊りながら帰ったのか。
・なぜ、たぬきはうれしくってたまらなかったのか。
・どうしておかみさんはたぬきを逃がしたのか
・たぬきの目がくるりくるりと回るのはどうしてか。
・どうしてたぬきはまいばんのようにいたずらをしに来るのか。
この最後の「どうしてたぬきはまいばんのようにいたずらをしに来るのか」が発表されると、他の子どもたちが自分の解釈を語り始めました。
CC:そりゃ、いたずらしに来るよ。動物だもん。
CC:友達だからだよ
CC:たぬきっていたずら好きだもん。
しんた:たぶんなんも考えてなかったからいたずらをしたと思う。
CC:え~、それは違うと思うよ。いたずらしたかったんだよ
CC:先生、わかったわかった。
子どもたちはこの不思議に対して、それぞれの考えを話し始めますが、その理由はバラバラです。その考えのずれから、さらに発言する子が増えてきました。そこで、この不思議を取り上げ、全体の課題を設定しました。
【学習活動② たぬきがまいばんのようにいたずらをしに来る理由を考える。】
T:もうみんな、たぬきがいたずらしに来る理由を話したくなっているんだね。グループで話してみる?(グループで話し合う時間を短くとる)
T:たぬきさんになっていたずらしにくる理由を教えてくれる人いますか?
りゅう:(いたずらをするまね)
T:りゅうたぬきさんはどうしてまいばんいたずらをしにくるんですか?
りゅう:知っている人だからです。
CC:えっ、どういうこと?
りゅう:たぬきがおかみさんを知っているからいたずらしに来た。
CC:え~、でも知っている人ならいたずらしないんじゃない?
T:みんないろいろ考えてそうだね。今先生たちがしたみたいに、グループで一人の人がたぬきになりきって、残りの二人がたぬき役の人にインタビューして考えてみようか。
以上のようなやりとりをしながら、グループでの活動に移る前にたぬき役の人にインタビューをして考えるというモデルを示しました。
すると、グループでの活動の際もいたずらの劇をしているたぬき役の子に対して、残り二人がインタビューをしながら考えている様子が見られました。
しかし、インタビューという活動になったとたんに、叙述から離れて空想の世界で考えてしまう子もいます。そこで、叙述から離れて考えているグループにはどこからそう考えたのかを問うことで叙述に戻って考えられるよう支援をしていきました。
グループでの活動が進み、子どもたちがある程度考えを持てていることを見取ったタイミングで全体の場での話し合いに移行しました。
T:グループで話し合ったことを教えてくれますか?
おうた:だって、いたずら好きだからです。
CC:おなじです。
そうた:いたずらしたいからです。
CC:いっしょです。
まず初めに、たぬきがいたずら好きだからという意見を取り上げていきました。これは、これまでにたぬきが出てくる昔話に出合ってきたからこそ作り出されたたぬきのイメージによるものだと思います。
T:他にも理由はありますか?
ことね:だれも外にいなくて怖いから、だれかに会いたくてきてる。
CC:ん?あ~、たしかに
CC:(うんうんとうなずく子どもの姿)
CC:(少し首をかしげるような子どもの姿)
ことねさんの意見は、「山おくの一けんや」という場面の様子に着目した意見です。きちんと本文の叙述から場面の様子を想像し、たぬきの行動の理由を考えられています。
この発言を受け、たくさんの子が「たしかに~」「なるほど」と反応していますが、中には首をかしげている子もいました。
そこで、ことねさんの意見をみんなで考えていく時間をとりました。
T:ことねたぬきさんは「怖いからいたずらしにくる」って言ってたね。どこから「怖い」って思ったんだろう?チームで話してみて。
なおと:このたぬきは独りぼっちで寂しかったんじゃない?
りゅう:山おくだからさ、真っ暗だから怖かったんじゃないの?
T:山おくに注目して怖いって考えたんだね。
けいた:まっくらの中にお家が一つあったから、そこに行ったんだと思うよ。
りんか:明かりがついてたからいったんだと思うよ。
CC:あ~、なるほど
ことみ:山おくだからさ、だれもいなくて寂しかったんじゃないの?
CC:ぼくも誰もいなくて寂しかったことあるよ。
T:なるほど。みんなは山おくとか一けんやに注目して、怖いとか寂しいとか考えたんだね。
じゃあちょっと想像してみて、今ここは暗い山奥だよ。真っ暗な中に一つだけ明かりがついている家があるね。それ以外は真っ暗。想像できたかな。そんな中で、たぬきさんが毎晩いたずらしに行く理由をまたインタビューしてみよう。
ことねさんの意見をみんなで考えていくことで、「山おくの一けんや」という場面の状況が少しずつ全体で共有されていきました。そこで、具体的な場面の様子を示し、もう一度たぬきの行動の理由を考えていきました。
ののか:まっくらだったから、早くあのお家に行きたいって思ってる。
こうた:山おくの一けんやだから、ぼくだったらけっこう怖いから、すぐに入れてもらおうと思った。
まひろ:ほかにだれもいないから、おかみさんにあいたいなって思ってるんじゃない?
場面の様子を具体的に想像することで、たぬきがいたずらをしに来る理由が見えてきました。どの考えも、きちんと場面の様子と関連付けた読みになっています。
最後に「場面の様子」という言葉を子どもたちに教え、場面の様子を詳しく想像したからたぬきのいたずらの理由が考えられたことを価値付けていきました。
【学習活動③ 想像したことを基に実習生に手紙を書く】
最後に、実習生への手紙を書きました。いくつか紹介します。
場面の様子と関連付けたたぬきの行動の理由が書かれています。子どもたちは「早くこの手紙を実習生に送ってください」とワクワクしています。
次は実習生からどんな手紙が帰ってくるのでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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