【ごんぎつね①】冒頭の一文から「語りの構造」に目を向ける

公開日: 2023年10月11日水曜日 「ごんぎつね」(光村図書/東京書籍/教育出版)

国語科 溝上です。
今度こそ本当に「ごんぎつね」での実践を紹介していきます!
今回は「第1時」実践記録です。
※以降,登場する子どもの名前は,全て仮名です。

第1時の目標

冒頭の一文に着目して語りの構造に気付くとともに,範読を聞きながら感想交流をすることを通して,「『ごんぎつね』をどんな物語と語り継いでいきたいか」について,初めの考えを考えをもつことができる。

主な学習活動

① 冒頭の一文から分かることを話し合い,本時の課題をつかむ。
② 範読を聞き,感想交流をする。
③ 自分はこのお話をどんな物語と語り継いでいきたいか,初めの考えを書く。

学びの実際

<学習活動①> 

冒頭の一文から分かることを話し合い,本時の課題をつかむ。


T:昨日まで読み継がれてきた物語として「一つの花」を読んできたね。
それから,ボーナスステージに取り組んだ人もいました。
※ボーナスステージとは,既習の伝承作品「たぬきの糸車」「スーホの白い馬」「三年とうげ」で同様の活動を行うこと。
今日はね,もう1作品,教科書載っている語り継がれてきたお話。

C:お,おもしろそう!
C:「ごんぎつね」だ!
 
T:こんなスタートのやつがあるんです。(冒頭の一文を提示)
「これは,わたしが小さいときに,村の茂平というおじいさんから聞いたお話です。」
 
C:「ごんぎつね」だ!
T:あ,読んだことある人いるのかな?
C:はーい!(半数以上手があがる。ただし,全文を読み通していた子どもは少なかった)
T:先まで知っている人も多いみたいだけど,この一文目からどんなことがわかりますか?
ゆいな:昔から伝わってきたお話。
 
T:これどんなふうに伝わってきたって言えるかな?
なおこ:なんかおじいちゃん…「わたし」のおじいちゃんとか,そのおじいちゃんとか…
T:「わたし」って,私?(なおこさんのことばに立ち止まり,全員の土台をそろえる問い返し)
C:「わたし」は語り手だと思います。
C:語り手です!(前単元で「語り手」という学習用語を共有していたことがこの発言に繋がった)
T:ああ,ここ(一文目)に出てきている「わたし」?これ語り手なのね。
なおこ:(語り手)の,おじいちゃんとか,そのおじいちゃんのおじいちゃんとか,昔の人たちも知ってる…
C:あっわかった! C:すげえ! C:おもしろい!
T:こうやって,こうやって伝わってきて,「わたし」,これが語り手ってこと?
ゆうじ:今まで読んできた物語と感じが違う。
T:どう違うの?
ゆうじ:例えば「一つの花」で表すと,戦争中の現在のお話で,あの,前の話とはまだ言ってなくて,それでポンポン進んで,10年後の後ばなしを書いているけど,「ごんぎつね」は現代から始まっているから,後ばなしが一番最初にきているような感じが僕はして,新しい感じかな,みたいな。
(「一つの花」の作品構造と比較した発言。前単元で「なぜ作者は後ばなしを書いたのか?」について話し合ったことが,繋がってきていると考えられる)
(中略)
C:おじいちゃんとかおばあちゃんとかがいたのかもしれない。
ゆうじ:受け継いできたのかもしれないし,茂平さんが語り継いだのかもしれない。
T:じゃあ,どんな物語,どんなお話が語り継がれてきたのかを,見ていきましょう。

このように,冒頭の一文をじっくりと読み,語りの構造に目を向けることで,これから読むお話への期待感を高めるとともに,前回のブログでお話した「私はこう語りつぐ〜ごん・兵十との文通〜」という単元へのしかけとなるようにしました。

<学習活動②> 

範読を聞き,感想交流をする。


範読中のつぶやきを拾いながら,あらすじを捉えていきました。
基本的に自由に気付きを発言してよいことにしていましたが,以下の言葉はつぶやきの中から意識的に板書しました。

[第1場面]
・ひとりぼっちの小ぎつね(×子ぎつね)
・いたずら…理由がある? 家族がいない?いたずら好き?
[第2場面]
・ちょっとあんないたずらしなけりゃよかった。(反省)
[第3場面』 
・おれと同じ,ひとりぼっちの兵十か。
・まず ・次の日 ・その次の日 その次の日
[第4・5場面]
・引き合わないなあ。(ごんからみると)(人間から見ると)
[第6場面]
・その明くる日も
・「ああ〜」
(※クライマックスを聞きながら思わず子どもから漏れた声。「今のって,どんな「ああ〜」なの?と問い返すと,ごん・兵十それぞれの立場の心情や,読者としての感想の言葉が引き出された)

最後まで読み通すと,学習活動①で「語りの構造」に注目していたゆうじくんが「でも,この中に茂平が出てきていないので,茂平が誰から聞いたのかは結局わかりません。」と発言しました。
本時導入のしかけが,この発言につながってきていると考えられます。


<学習活動③> 

自分はこのお話をどんな物語と語り継いでいきたいか,初めの考えを書く。


ここで時間が来てしまったので,最後に,現時点で自分だったらこの物語をどう語りついでいきたいかを書いて第1時を閉じました。
以下は,子どもたちが書いた「どんな物語と語り継ぎたいか」の一部です。

「ごんが最初は悪いやつだったけど 最後にかけて優しくなった物語」(はるき)
「悪いきつねがいいきつねになるけれども誤解されて殺されてしまう話」(かいと)
「最初は、悪い、ごんぎつねだったけれど後から栗をあげたり、まつたけをあげていて、優しかったのに、兵十が鉄砲で撃ってかわいそうな物語」(みわこ)

・はるきくんのように「悪い(いたずら)ぎつね→優しくなった」のように,ごんの変化に着目している子どもが最も多かったです。「成長する」という表現を使っている子どももいました。これらは,前単元「一つの花」での場面の移り変わりに着目して変化を捉える学習が生きていると考えられます。ただし,ごんは本当に優しくなったのか?ごんの成長ストーリーなのか?という点については,これから精査していく必要があると思います。

・かいとくんもはるきくんと同様「悪い→いいきつね」と変化を捉えていますが,その上で,「誤解」「殺されてしまう」というクライマックスを付け加えています。かいとくんのようにクライマックスの出来事を記述している子どもは多かったですが,それを自分がどう捉えるかまで捉えるかまで書けている子どもは5名程度でした。「感想や考えをもつ」という資質・能力の育成には,ここからもう一歩踏み込む必要があると考えます。

・みわこさんは,場面展開を取り上げた上で最後に「かわいそう」という自分の感想を入れていました。他にも「切ない」「悲劇」「悲しい」などの感想の言葉が見られました。これらを取り上げ,一人一人の感じ方の違いを顕在化させた上で,「場面展開+感想」という形で「どんな物語と語り継ぎたいか」の再考へ繋げていきたいと思います。

以上,第1時の様子でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。

国語科 溝上 剛道

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