〜言語活動を創り上げるための「わたしの問い」〜「単元 太一のモノローグ『海の命』(光村図書6年)」単元びらき②
公開日: 2020年2月1日土曜日 「海の命」(光村図書6年) 1人1台端末
今回は,その続きからです。
「天気の子」の動画を見せた後,今度は教師が「海の命」で作成したショートムービーのテンプレート(人物像を表す言葉やモノローグを吹き込んでいないもの)を提示し,登場人物を確認しました。そして,そのデータを班ごとにタブレット端末で渡し,それぞれの班で『太一のモノローグ』を創り上げていくという見通しをもたせました。その上で,「語り出しにどんな言葉を入れるか,それぞれの人物をどんな言葉で表すか,この時はどんなモノローグを吹き込むかを考えながら読んでみよう。」と呼びかけて,「海の命」の範読をしました。
最後まで読み通した後,『太一のモノローグ』を作るためのワークシート(構成メモ)を渡し,次のように投げかけました。
T:まず,今読んでみたところで,太一はこう語ったんじゃない?っていうのを交流してみましょう。おとうについては?与吉じいさについては?母については?山場については?では話し合ってみましょう。
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以下は,1班の話し合いの様子です。(※名前は全て仮名)
ななこ:母はどうだと思う?
ゆ み:この母ってさ,多分だけど,何で母がこう言ったかっていうと,「おとうの死んだ瀬にもぐると…」っておそれてるじゃん。おとうが死んじゃったから,太一も死ぬかもしれないじゃん。
さとし:でもさ,母の登場って2回あるじゃん。えっ?2回だよね。
ななこ:ここ?
さとし:母は「美しいおばあさんになった」っていらなくない?
ななこ:時が経ったことがわかるんじゃない?
さとし:それなら「結婚し」ってところだけでもよくない?
ゆ み:だから,いつまでも幸せにずうっと…
ひさし:変わったんだよ。
ゆ み:でもさ,「海の命は全く変わらない」って…
さとし:おれはここが一番疑問。
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『太一のモノローグ』を創るという見通しをもっていることで,第1時ながら,早くも1班では母の存在やその描写に着目する姿が見られた。この後,モノローグを創り上げていく過程まで具体的に見通せるように,以下の学習計画(学習の手引き)を提示しました。
単元の学習計画(学習の手引き) |
特に,基本となる問いとして,「太一は〜のことをどう語るか?【心情や相互関係】」「(人物名)はどんな人物と言えるか?【人物像】」「太一はこの物語をどんな物語と語るか?【物語の全体像】」の3つを確認しました。(学習計画「2―④ウ〜カ」参照)その上で,一人一人が「わたしの問い」を立てていきました。ここで言う「わたしの問い」とは,「物語を読んで疑問に思ったこと」ではありません。
学習課題を達成するために,自ら文章に働きかけて立てた問い
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のことです。言い換えるならば,
成果物(ここでは『太一のモノローグ』)を創り上げるために読み取るべき内容(本単元では【物語の全体像】【相互関係や心情の変化】【人物像】)について,自分が着目した叙述をもとにして立てた問い
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T :まずは基本の問いで,自分が担当する人物名を入れればいいよ。誰担当?
まさと:与吉じいさです。だったら「与吉じいさはどんな人物か?」とかでいいんですか?
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このように助言すると,まさと君は次のような問いを立てました。
毎日タイを二十ぴきとる与吉じいさは,どんな人物だろう。
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まさと君は「与吉じいさは,毎日タイを二十ぴきとると,もう道具を片付けた。」というじいさの行動に着目し,問いを立てることができました。その他の子どもが立てた問いは,次の通りです。
担当 | 問いの種類 | わたしの問い |
おとう | 人物像 | ①おとうはどんな人物で,太一に何を伝えたかったのか? |
おとう | 心情 | ①じまんをしないし,不漁の日が十日間続いても顔色一つ変えない父を,太一はどう思っていたのか? |
おとう | 人物像 | ①どんなに大物をしとめてもじまんせず,どんな不良が続いても少しも変わらなかった父はどんな人物か? |
おとう | 行動の理由 | ①なぜおとうは大物をしとめてもじまんしなかったのか?不漁の日が続いても少しも変わらなかったのか? |
おとう | 行動の理由 | ①母はおとうの死んだ瀬に行く太一を引きとめようとしたのか? |
おとう | 行動の理由 | ①なぜ太一は瀬の主を殺さなかったのか? |
おとう | 心情 | ①不漁の日が続いた時の父の気持ちは? |
おとう | 人物像 | ①大きな魚が釣れた時「海のめぐみ」と思うおとうはどんな人物か? |
おとう | 行動の理由 | ①なぜおとうはロープを外せたはずなのに外さなかったのか?魚を意地でも捕獲したかったのか? |
おとう | 行動の理由 | ①なぜおとうは喜ばなかったのか? |
おとう | 人物像 | ①大物をしとめても「海のめぐみだからなあ」とじまんすることなく言う父は,どういう人物像か? |
おとう | 行動の理由 | ①なぜおとうは死ぬまで巨大なクエをとることをあきらめなかったのか? |
おとう | 行動の理由 | ①なぜおとうは,クエをあきらめなかったのか? |
おとう | 行動の理由 | ①なぜおとうは,死ぬまでクエをあきらめなかったのか? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜじいさは太一につり糸をにぎらせないほど厳しかったのに,最後は優しく「一人前」と言ったのか? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜ与吉じいさは太一につり糸を持たせてあげなかったのか? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜじいさは「千びきに一ぴきでいいんだ。千びきにいるうち一ぴきをつれば,ずっとこの海で生きていけるよ。」という発言をしたのか? |
じいさ | 人物像 | ①毎日隊を二十匹とる与吉じいさは,どんな人物だろう? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜ与吉じいさは船に乗れなくなるかを分かったかのように「村一番の漁師」と言ったのか? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜ与吉じいさは太一になかなかつり糸をにぎらせなかったのか?その時太一はどう思ったのか? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜ与吉じいさは,太一になかなか釣り糸をにぎらせず,上がってきた魚から釣り糸を外す仕事ばかりさせたのか。 |
じいさ | 意味 | ①太一は与吉じいさが死んだ時「海に帰りましたか」と言ったが,太一にとっての「海」とは何なのか? |
じいさ | 相互関係 | ①「千びきに一ぴきで〜いけるよ。」という与吉じいさの言葉は,太一にどんなことを考えさせようとしたのか? |
じいさ | 意味 | ①「千びきに一ぴきで〜いけるよ。」という言葉は太一にどんな影響を与え,どんな意味があるのだろうか? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜじいさは,L21では太一が弟子になることを嬉しく思っていないのに,L36では太一を褒めるような言葉をかけているのか? |
じいさ | 心情の変化 | ①与吉じいさはいつから太一を大切にしたいと思うようになったのか? |
じいさ | 心情 | ①じいさはどんな思いで太一に「村一番の漁師」と言ったのか? |
じいさ | 心情 | ①じいさは何のために釣りをしていたのか? |
じいさ | 意味 | ①「ここはおまえの海だ」とは,どういうことなのだろう? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜ与吉じいさはなかなか太一につり糸をにぎらせなかったのに,36行目で急に「村一番の漁師」と認めたのか。 |
じいさ | 意味 | ①与吉じいさは「千びきに一ぴきでいい」と言っていたが,どういうことなのか? |
じいさ | 行動の理由 | ①なぜ与吉じいさは太一に「村一番の漁師」と言ったのか? |
母 | 人物像 | ①「おだやかで満ち足りた」と描かれている母は,どんな人物と言えるか? |
母 | 心情 | ①太一を心配している母の悲しみを,太一はどのような思いで背負おうとしたのだろうか? |
母 | 行動の理由 | ①なぜ母は「おまえの心の中が見えるようで」と太一に言ったのか? |
母 | 心情 | ①太一は,母に止められても瀬に行った時のことをどう語るか? |
母 | 人物像 | ①瀬に行ったりして危険を冒してもクエをとるおとうはどんな人物か? |
母 | 心情 | ①太一は,大きなクエを見のがして海の上に上がっていったことをどう語るか? |
母 | 意味 | ①「太一にとって自由な世界」は太一目線だけど,じゃあ母からの目線は? |
母 | 意味 | ①母にとっての海は,どのような世界だったのか。また太一にとっての海の「自由な世界」はどのような世界なのか? |
母 | 行動の理由 | ①なぜ太一は母の制止をふり切ってまでも,海にもぐったのか? |
母 | 意味 | ①「母の悲しみ」とは何を示しているのか? |
母 | 心情 | ①母は,太一が漁をするときはどんな気持ちでいるのか? |
母 | 行動の様子 | ①「母が毎日見ている海」と書いてあるが,母はどんな目で毎日海を見ていたのか? |
母 | 意味 | ①母が思う,毎日見ている海とは? |
母 | 行動の様子 | ①母はどんな目で海を毎日見ていたのか? |
山場 | 意味 | ①題名になっているけど,86行目の「大魚は『海の命』だと思えた」と書いてあるけど,太一は何を言いたかったのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は一回ほほえんだ後,もう一度「えがお」を作ったのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は今まで魚を殺したのに,瀬の主は殺さなかったのか?おとうを殺したとも言える魚なのに… |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は瀬の主を殺さなかったのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は120kgもありそうなクエを見つけ出したのにも関わらず,つかまえなかったのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は,おとうを殺したクエを自分のおとうだと思い,もりをささなかったのだろう? |
山場 | 心情 | ①おとうだと思える大魚を,太一はどのように語るだろうか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一はクエのことを「おとう,ここにおられたのですか。また会いに来ますから」と言ったのか? |
山場 | 心情 | ①数限りなく魚を殺した時の気持ちは? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は大物のクエをとろうとしなかったのか。 |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は,今まで数限りなく魚を殺してきたのに「こんな感情になったのは初めてだ」という気持ちになったのか? |
山場 | 心情 | ①動こうとしない瀬の主を見た太一は,何を思ったのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一は大きなクエをとらなかったのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ,13行目では「光る緑色の目」と書かれているのに,64行目では「青い宝石の目」に変わっているのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ太一はクエにえがおを作ったのか? |
山場 | 描写 | ①なぜ瀬の主の目の色が変わったのか? |
山場 | 行動の理由 | ①なぜ目の色が変わっているのに,太一は父を破った瀬の主と思ったのか? |
山場 | 描写 | ①なぜ瀬の主の目の色が変わったのか? |
山場 | 心情 | ①太一は大魚を海の命だと思えたのか? |
後話 | 行動の理由 | ①なぜ太一は,巨大なクエを岩の穴で見かけたのにもりを打たなかったことを,生涯だれにも話さなかったのか? |
後話 | 行動の理由 | ①なぜ太一は巨大なクエのことを,生涯誰にも言わなかったのか? |
後話 | 行動の理由 | ①なぜクエをとらなかったことをかくしたのか? |
後話 | 行動 | ①太一は,青い宝石の目の魚のことを話さなかったのか? |
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