言語活動「3つの『ごんぎつね読書レター』を書く」で、「考えの形成」の力を身に付ける授業①(「ごんぎつね」)~言語活動や単元の学習課題と出合う「単元開き」~

公開日: 2021年2月9日火曜日

本校研究発表会まで、残り10日程となりました。

そこで、昨年度から始めました毎時間の授業記録を紹介していこうと思います。

現在、単元の授業記録がA4で60頁を超えようとしています。

かなりのボリュームになっていますので、こちらではダイジェスト版の授業記録として、ご紹介します。

【第1時の目標 「単元の見通しをもち、1通目の『ごんぎつね読書レター』を書くことができる。」】
【図1 第1時の板書】 


これまでの単元と本単元の違いとして、「言語活動から学びをスタートすること」がありました。

これまでも「言語活動」を、単元の学びの中核に据えて学びを創り出してきました。

その学びの中で、言語活動の質を高めるため「わたしの問い」を立て、その解決のための解決策を駆使し、たっぷりとした「思考」を通すことで、指導事項である「言葉の力」を身に付けることのできる単元を創り出してきました。

しかし、本単元は「言語活動から学びをスタートする」割合がより増すように、この「ごんぎつね読書レター」という言語活動を開発しました。そのための第1時間目の授業の紹介です。

本時に行ったことは以下の5つです。

①言語活動との出合い(言語活動のイメージを具体的にもち、言語活動を成し遂げるための見通しをもつ。)

②学習課題の提示(この言語活動はどんな力を付けるために、どうやって行うのかを把握する。)

③全文通読(誤読をなくすことと、「ごんぎつね」の世界観を捉えられるよう、難しい言葉の意味を確認する。)

④一通目の読書レターを書く。

⑤国語の記録(学習感想)を書く。


予定では、45分で行う予定でしたが、(「言語活動との出合い」…5分、「学習課題の提示」…5分、「全文通読」…15分、「1通目の読書レター」…17分、「国語の記録」…3分)15分程超過して授業を行うこととんりました。その原因として、予定よりも全文音読に時間がかかったことにがあります。


授業の導入では、これまでの単元で用いた「学習課題」を振り返りました。

本校国語科の学習課題は、「3フレーズで創る学習課題」です。

指導事項と思考操作、言語活動の3つの要素で構成した、単元のミッションともいうべき「学習課題」です。

例えば、3年生の時に読んだ「もうすぐ雨に」であれば「もうすぐ雨にハウスを作ろう」という言語活動を通して、「登場人物の行動や気持ちなどについて、物語に描かれた言葉(叙述)をもとに読む力を付ける」という指導事項を身に付けてきました。

「きつつきの商売」であれば「おとや百貨店を開こう」という言語活動を通して「構造と内容の把握」の力を、「白いぼうし」なら「松井さんのひみつを1冊の本にまとめて出版しよう」を通して「構造と内容の把握」の力を付けるなど、それぞれの言語活動とともに、「構造と内容の把握」や「精査・解釈」、「考えの形成」などの身に付けてきた力を振り返って行きました。

子どもたちからは、「ああ~」「これは研究発表会でやったのだ。一番覚えている!」「これはこの前のマーちんのだ」など、様々な反応が生まれました。

そのような学習課題の振り返りの後、本単元で取り組む言語活動「自分の感想や考えをのせて、3つの『ごんぎつね読書レター』を書く」の入った学習課題を提示しました。具体的には以下の通りです。

<単元の学習課題>
【身に付ける力】 
  物語を読んで理解したことを基にして、自分の感想や考えをもつ力を付ける。
【思考操作】 
  そのために、登場人物の行動や会話、地の文の言葉をつなげて読み、
【言語活動】       
  3つの「ごんぎつね読書レター」を書く。                  

この学習課題を提示する前には「これまでの総決算の活動だ」「誰もやったことがない活動である」など、子どもたちの言語活動に挑戦しようとする心を刺激しました。
その教師の言葉に子どもたちは、「難しそうだけど、やってみたい!」「難しそうだけど、今まで学習した力を使って、感想を持って書くと前の力も付くし、なんか感想とかをもって、どんな本とかでも楽しめるからいい。」などの反応をしていました。

【図2 言語活動ボード】

言語活動を提示する際、必要となるものが上の「言語活動ボード」です。既習教材を用いて、言語活動のモデルを示すのです。教科目標にあるとおり「言語活動を通して」指導事項を身に付けていくのであれば、子どもたちが取り組むべき言語活動の把握は、具体的でなければなりません。また、言語活動のモデルを「ごんぎつね」を基に教師が作成したのであれば、子どもたちは教師が作った言語活動の形式をコピーするだけの学びになりかねません。そのため、既習教材である「三年とうげ」で言語活動のモデルを、教師が作成しました。

子どもたちはこの言語活動ボードを見ながら、言語活動に取り組んでいきます。言語活動を中核に据えた学びを具現化すると、子どもたちの学びは多種多様なのものになっていきます。そのような広がる個人差に対応するため、この言語活動ボードを参考に言語活動に取り組むと、自力で「ごんぎつね読書レター」を書き進められるように作成しておきます。

この言語活動ボードを作ることには、かなりの時間をかけます。時間をかけるのですが、このボードを作っていると、子どもたちの学びの様子がより具体的に、想定できるようになります。だから、このボードづくりは、私の大好きな授業準備の一つです。

言語活動を提示した後は、物語の全文を通読しました。
最後の場面を音読する時には、できる限り臨場感のある音読を心掛けて行いました。
最後、ごんがどうなるのかという思いが、最後の一文に向けて高まっていく様子が感じられました。

通読後には、1通目の読書レターを書く活動に移りました。
1通目の読書レターを書こうとするとき、子どもたちの顔に「難しそう」「どうやったらいいの?」などがあるように感じました。そこで、1通目に書く内容を、モデル文を使って確認していきました。
1通目にいきなりごんの心情やその変化、性格や情景などについて書けるはずがありません。
1通目の読書レターは、まだ「ごんぎつね」を読んでない人に対して、物語の設定や人物の紹介をするとよいことを確認しました。そうすると、再度「やってみたい!」「そういうことを書くのか!」と、言語活動に対する意欲を高める姿が見られました。

読書レターを書くのにかかった時間は、20分程度。
しかし、1通目の読書レターを書く中でも、自分たちが読書レターに使う言葉にこだわりを見せる姿がありました。(「ごんはやさしいと言っていいのか」「ごんをどんな言葉で紹介しようか」等)
この1通目の読書レターを書きながら、明らかにしたいと思った内容について、授業終末の国語の記録で、「わたしの問い」を立てていき、第2時につなげていきました。

子どもたちが立てた、2通目の読書レターを書くために立てた「わたしの問い」は、次のようなでした。やはり、物語の結末から、ごんについての問いを立てる子どもが多くいました。

〇ごんは、兵十にくりや松たけを持って行っている時、どう思って置いていたのだろう。

〇なぜごんぎつねは、ひょうじゅうを可哀想に思ったのか?

〇ごんぎつねはなぜ急にこころをいれかえたのだろう?

〇畑へ入っていもをほり散らしたり、菜種がらのほしてあるのへ火をつけたりと、いたずらばかりするごんの性格はどんな性格なのか?

〇なんでごんはとっても優しいのにいたずらをしたのだろう?




これらの「問い」を立てた子どもたちが、自分で考えた解決策を用いて、見事に単元の学びを創っていきます。どのような学びが生まれたのかは、また、明日このブログで書きたいと思います。


【子どもたちが書いた1通目の読書レター】

最後に告知ですが、
ここで紹介しました「単元開き」の記録は、抜粋となります。詳細につきましては、単元全ての授業記録をまとめたものがあります。ただ、冒頭で述べました通り、頁数が60頁超になっています。

かなり大きなデータとなりますので、2月20日(土)の研究発表会の分科会にて、ダウンロードできるURLをお伝えしようと考えています。

1人1人の子どもが、毎時間どのような問いを立て、その解決のためにどのような解決策を用いたのかを、克明に記録した資料となっております。

今度の本校の研究発表会にご参加いただける先生方には、授業動画と一緒に配ろうとかとも考えたのですが、60頁を超える文書をもらってもなかなか読む時間がないかなと思い、必要な先生方にダウンロードしていただく方法を取ろうと考えました。 お読みいただければ幸いです。


最初にも書きましたが、2月20日(土)の本校研究発表会まで、残り10日です。
今年度の研究発表会は、オンラインでの開催です。
研究発表会前の1週間で、このブログで紹介している単元開きの授業の動画や、単元の学びの姿を記録した授業動画、本時の授業の動画などを公開します。(研究発表会にご参加いただいた先生方に、授業動画のURLをお送りいたします。)
なかなか単元開きの授業を公開することがないので、単元開きの授業につきましても、ご意見いただけると幸いです。 

また、公開した授業動画を基に、2月20日(土)には授業研究会を開催いたします。

その授業研究会では、京都大学の石井英真先生熊本大学の北川雅浩先生からご助言をいただきます。数学教育を専門とされる石井先生から、どのような授業分析がいただけるのかとても楽しみです。昨年度の研究発表会でも、とてもスリリングなご助言をいただき、知的興奮しっぱなしでした。

北川先生からも、私の授業を分析する視点の外側から、大きなご示唆をいただきました。
そのような授業研究会に参加していただくためのZOOMのURLやID、 パスコードにつきましても、お申込みいただいた先生方には配信いたします。

研究発表会のお申し込みは、2月14日(日)まで可能です。まだまだ受け付けております。

全国の先生方と、私が2年間担任している4年3組の子どもたちと生み出した「ごんぎつね読書レター」に取り組む学びについて、検討できることを願っております。 
たくさんの先生方のご参加をお待ちしております。


熊本大学教育学部附属小学校 研究主任 国語科 中尾聡志

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