言語活動「3つの『ごんぎつね読書レター』を書く」で、「考えの形成」の力を身に付ける授業⑤(第5時間目)(光村図書4年下「ごんぎつね」)~「ごんだけしか知らないこと」「兵十や村人が知っていること」「兵十や村人が知らないこと」~

公開日: 2021年2月15日月曜日

この日の朝自習にも,前時の最後に新しく立てた「わたしの問い」と授業で使った「解決策」の一覧を配布し,友達がどのような問いを立てているのかや,友達が使っている解決策について交流する時間を設定しました。

解決策を交流する中で,子どもたちがペアやグループで話し合った内容は以下の通りです。 


児童A 1回自分が思った解決を書き,その根拠となる文を書くという解決策ってどういうこと?
児童B 自分の問いがあるから,根拠をさがさずに,とりあえず自分が考えた解決を書いてから,それがどこに書いてあるかとか根拠を考えて,この解決だったらここの文がとかを考える。それで,根拠があったらこの解決はいいけど,なかったら,もう1回解決した内容を読んでから,別の解決を書く。
T   それしたらいいことってあるの?<児童B>さんは,なんでその方法を取ったの?
児童B 解決策を書くって考えたら,この方法をやっていることに気付いたから。で,前,<児童C>くんが似ていることをしていたから。

解決策を共有することは,そのまま子どもたちの読む力を向上することにつながると考えます。
同じ指導事項を使って読む場合にも,子どもそれぞれの形があり,自分なりの方法にして読むという方法に取り組むからこそ,指導事項が自分にとっての確かな読む力となると考えます。

この「ごんぎつね」という物語を読む際には,学習課題にもある通り,「関連付けて読む」ということがキーワードになります。
子どもたちが関連付けるべき叙述は,学習課題の思考操作にある「行動,会話,地の文の言葉」の3つです。
これらの言葉を,どのように関連付けて読むのかについて,解決策として言語化させていきました。
その言語化された解決策について,興味があったり,質問したりしたいと考えた内容について交流させていったのです。

朝自習の時間には,この他に,ごんの行為を表す語彙となる「つぐないとお返し」の違いの検討,「問いの種類と範囲」を確認しました。 

「問いの種類と範囲」とは,子どもたちが立てる問いに偏りがあったり,物語の前半の叙述についての問いにこだわり続けている姿があったりしたので,その問いを立てることへのこだわりを大事にしながらも,「クライマックスの場面の前までを読んだ人に送る読書レター」となるように,六の場面の前までのごんの「行動の理由」「気持ち」「気持ちの変化」「性格」「情景」を読み解くための「わたしの問い」を立てさせてられるようにしていきました。

具体的には,例えば,ごんのいたずらの理由について,粘り強く考えることには大きな価値はあるが,2つ目の読書レターを書く上では,その他についての問いを立てて解決していくからこそ,読み応えのあるものになっていくということを語っていきました。

この教師の語りをもとに,これまで自分が立てた問いが,どの場面についてのものだったのかを考えさせ,自分たちが書く読書レターの質を高めるために必要な問いを立てられるように,問いの立て方についての指導を行い、本時の授業に臨みました。。

第5時の目標 「5つ目の『わたしの問い』の解決に取り組み,問いの発展・更新を行うことができる。」


本時で考えさせたかったことは,ある子が立てた問い「ごんの外に出ている性格と内にある性格は,(何が違って,)それぞれどのような性格なのだろう。」についてです。 

この問いを立てた子どもの読みは,とても鋭いと考えています。

この「ごんぎつね」という物語は,ごんと兵十・村人の関係の中で,「ごんだけしか知らないこと」「兵十や村人が知っていること」「兵十や村人が知らないこと」があります。

クライマックスの途中まで,ごんが視点人物として描かれているため,ごんのしていていることは全て読者にわかるように描かれています。

そのため読者は、対人物である兵十もごんが隠れて行っていた「つぐない」の全てを知っているかのように読んでしまいがちです。

その読みのままでは,「ごんぎつね」を深く読むことはできません。

そのため,1人の子どもの問いの解決を基に,ごんだけしか知らないことは何か,兵十や村人が知らないこととは何かを考える視点を持たせていき,その視点から子どもたちの1人1人の問いの解決を見つめ直させようと考えました。

このような視点で,自分の問いの解決を見つめ直させることで,学びの質はさらに向上すると考えたのです。

実際の授業では,導入の場面でこの子の問いを提示し,どのように解釈すべきか考えさせました。

加えて,この子は「ごんが,兵十のおっかあが死んだと分かった時,どういう気持ちだったのだろう。」という大きな問いを単元導入で立て,この大きな問いを解決するために,「ごんの外に出ている性格と内にある性格は,(何が違って,)それぞれどのような性格なのだろう。」という小さな問いを立てていました。

このような粘り強く問いの解決に取り組もうとする姿を共有することにも,全体の学びの質の向上が生まれると考え,全体で共有していきました。

少し長くなりますが,今回は発話記録を載せます。(子どもの仮名で書いた詳細な授業記録は,授業研究会の中で配布いたします。)



T 今日も問いの解決の時間をたっぷりとろうと思うのですが,今日も残り5分で振り返りを書こうと思うんだけど、けど,振り返りの4つの視点ってわかってる?「今日できたこと」「新しく立てた問い」「使った解決策」「次にするとよいこと」だったよね。振り返りを書く時に使うから確認しておこうね。

T さあ,今日はみんなでこの人の問いをどう思うか考えたいと思います。

(「児童Cの大きな問い」と,大きな問いを明らかにするために立てた小さな問いを提示する。)

T (児童Cの大きな問いである)「ごんが,兵十のおっかあが死んだと分かった時,どういう気持ちだったのだろう。」という問いを解決した内容は,読書レターに書けますか? 
C 書けます。 
T そうそう。でも,この問いは大きかったんだよね。だから児童Cさんは,小さな問いを立てました。どんな問いかというと…「ごんの外に出ている性格と内にある性格は,(何が違って,)それぞれどのような性格なのだろう。」。これどういう意味か分かる?隣の人と話してごらん。

児童D ごんの心みたいなのがあって,心の真ん中が内で,外が中よりも小さいというか,小さくて,中を囲んでいる感じ。

児童E 前の時間に,児童Cくんと話したんだですど,外というのは兵十とか村の人々に思われている性格で,中は兵十や村の人々は知らない性格。

T 兵十とか村人はごんのこと知っているよね。兵十と村人はこのごんの外側の性格は知っているんだよね。
 児童F いたずらばかり
 C   いたずら好きみたいな
T ねえ?これただのいたずらやったっけ? 
 C いいえ。 C 違う。
T そんないたずらばかりするごんのことを、兵十は何て呼んでいたっけ?
 C ぬすっとぎつねめ。
T ぬすっとぎつねめって,みんなは友達に「め」って付ける?付けないよね?
 C すっごい怒っている。
 児童F 外の性格を知っている人しか,そういうことは言わない。
T ここを見ている人だね。ねえ,みんな。ごんの心の中って知っているのかな?
 C いえ。知らない。
T でも,みんなはどれを見ていると思う?みんなって君たち読者のことだよ。
 C どっちも知っている。
T みんなはどっちも知っているんだよね。だから,みんなはごんの性格を何と表現していいか分からないって言っているんだよね。みんなは両方知っているから,こっちを言えばこっちとつながらなくなってしまう。でも,村人や兵十からしたら,知っていると知らないがある。それを児童Cくんは,外と内って表現しているんだよね。そんな見方でこの物語を読んでいたかな。
 児童G 外と内は考えていない。
T 考えていないよね。問いの解決をするときに,村人と兵十は何を見てて、何を見ていないのかを考えることは,とても大事なことかもしれないね。そのことを,児童Cくんはずっと考えていたんです。
(子どもたちは児童Cに拍手する)
T さあ,今日はこのことを生かしながら,昨日文末表現をした。このようなのを使って問いの解決をしていきましょう。時間はあと何分ありますか?
 C あと30分です。
T 残り5分になったら,国語の記録を書きましょう。問いはいくつ解決できる?るうまくんは,最初の5分~10分で何をして何をするということを具体的に書いているよ。そうすると何をするのか迷わないものね。



ここまでで,15分程度の全体での学びでした。

授業全体を通して,全体で解決する時間以外,目いっぱい子どもたちは問いの解決と発展・更新に取り組みました。

子どもたちのノートに書かれた学びやビデオカメラで撮影した様子を見ていると,黙々と自分の考えをまとめたり,同じような問いを立てている子ども同士でペアやグループをつくり,自分の問いの解決がより強くて,深くて、ぎっしり詰まったものとなるように思考したりする姿が見られました。

1点,気になることがあったのですが,ペアやグループでの話し合いの量よりも,1人で思考し,思考した結果を短い時間で交流しては,自分の学びに戻る姿の方が多く見られるようになりました。
これまでの単元と比べて,個人で思考する量が増えたように感じたのです。
このことは粘り強く共に学ぶ子どもの姿として合致していると考えますが,国語辞典や類語辞典を使って,言葉の意味を調べることにばかり活動の時間を割いている子どもが数人いました。

子どもたちに身に付けるべきは,物語をいかに読むかという「物語の読み方」です。
より質の高い読み方を身に付けさせるために,解決の結果の質だけでなく,立てる問い自体にも力強さをもたせ,より質の高い読書レターが書けるような手立てを打っていく必要があると感じました。

次時,どのような学びを子どもたちの中に生み出すべきかじっくり考えながら,次時がこの単元の成否を分けるポイントになるのではないかと考えていました。



ここからは告知になります。
昨日のブログで書いた通り,本校研究発表会の申し込みは締め切られました。
これからは,研究会当日に向けて,授業ダイジェストとなる授業記録を下記の日程であげていきます。

16日(火):第6時授業ダイジェスト【2通目を書くための問いの解決と発展・更新】 

17日(水):第7時授業ダイジェスト【2通目のごんぎつね読書レター】

18日(木):第8時授業ダイジェスト【クライマックスの場面の問いの解決と発展・更新】

19日(金):第9時授業ダイジェスト【クライマックスの場面の問いの解決と発展・更新<前時>】

より質の高い研究協議ができるよう,研究発表会当日まで、準備していくつもりです。
研究発表会まで残り5日、どうぞよろしくお願いいたします。

このブログに書く授業記録のダイジェストを基に,20日(土)の研究発表会にて,「ごんぎつね読書レター」に取り組んだ子どもたちの学びを協議しましょう。
たくさんの先生方と協議できることを,楽しみにしております。


熊本大学教育学部附属小学校 中尾聡志
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A

0 件のコメント :

コメントを投稿