言語活動「3つの『ごんぎつね読書レター』を書く」で、「考えの形成」の力を身に付ける授業③(第3時間目)(光村図書4年下「ごんぎつね」)~問いとその解決のつながりを考える~

公開日: 2021年2月13日土曜日

単元開きから始まったこの「ごんぎつね」読書レターも,第3時を迎え,活動に勢いが出てきました。

これまでの単元と本単元の違いとして,「一人の力で問いの解決に取り組む時間が長くなった」ことがあります。

子どもたちが共有している問いを解決するための「解決策」の中に,「自分の考えを持ったうえで,友達と話し合う」というものがあります。

子どもたちも,友達と話し合う学びがとても好きです。

話し合うことで,新たな気づきや発見をした経験を豊富に持っているからです。

 

「子どもたちが話し合うことを好む」のは,話し合ったことによる成功体験が積み重なっているからです。

そのような話し合いの成功体験を,全教科で積み上げていくことが,対話的な学びを支える土台になるのだと思います。

最初は,誰もが答えを生み出しやすいことについてペアで話し合う場を設け,「確認」することから始めます。

「確認」がしっかりできるようになれば,「2人の考えをまとめるて,新しい考えを生み出す(もしくは,どちらかを選択する)」。

最終的には,「新しい考えを生み出す」話し合いに取り組んでいきます。

 

この流れは,行きつ戻りつする教師の手立てです。

子どもたちの話し合う力は,一方方向に高まっていくものではありません。

子どもの学びの様子を見取り,ちょっと難しい話し合いを行い,子どもが話し合いに対してもっている価値が弱くなりそうであれば,より取り組みやすい話し合いをして,話し合いに対する価値を実感させていきます。

そのような地道な手立てを,これまで積み重ねてきました。

 

このような指導は,AIにはできないと思います。

人間である教師が,子どもの学びを感じ取り,適切な手立てをとっていくのです。

うまくいかないことの方がたくさんありますが,3年生の時から少しずつ積み重ねていった結果のこの「ごんぎつね読書レター」の単元です。

早く先生方の手元に,授業動画をお届けしたいです。


さて,第3時は「問いとその解決のつながりの強さを考える学び」です。

1人の男の子の解決の様子を取り上げ,より「深くて,強くて,ぎっしり詰まった」解決になるように,解決の思考過程を共有していく時間となっています。 

第3時の目標 「3つ目の『わたしの問い』の解決に取り組み,問いの発展・更新を行うことができる。」


第2時の授業記録に示した通り,本時の導入で,次のある男の子の問いと解決を全体に提示しました。

【ある男の子の問い】
 なぜ,ごんはやさしいのに,いたずらばかりするのだろう。

【ある男の子の問いの解決】
 自分がやさしいと思っていないから。

 

この問いと解決のつながりについて,納得している子どもとそうではない子どもの割合は,半分半分程度であるなと見て感じました。

この男の子自身は,不安なところもあるけれど,納得しているようでした。

 

この男の子以外の子どもから出された反応は,次のようなものでした。

 

・ごんは優しいという自覚はないということで,本心は優しいんだけども,ちょっといたずらをするところもある。

・ぼくたちのペアでは、もうちょっと強い解決があるんじゃないかなと思いました。自分が優しいとは思っていないところはいいと思うんだけど,う~ん,なんか,自分が…

 

この子どもたちの反応に対して,「ごんは優しい」の意味を考えさせるために,自分のクラスの友達の「優しい」と,ごんは「優しい」の違いについて尋ねました。

「優しい」というイメージがふんわりした言葉の指す内容を具体的にしようとしました。

つまり,「言葉による見方・考え方」を働かせようとしたのです。

 

すると,次のような反応が生まれました。

・優しいのは厳しくて優しいってのもあるし,優しいのはもっと,種類がある。

・ごんはそんな頻繁に優しくないじゃん。兵十のうなぎを取ったりしたんだから。

・外に出ているのだと,完全に優しいとは言い切れないけど,心の中は優しい。

 

この後の話題が,ごんの「いたずら」に移っていきました。

そのため,「いたずら」の内実について考えました。

ここでも「いたずら」の指す言葉の意味を,自分たちの生活の中で使う「いたずら」とごんがしていると思っている「いたずら」の中身と,村人にとっての「いたずら」の意味の違いを捉えさせました。

ここでもやはり,読みを深めるための「言葉による見方・考え方」を働かせるのです。

 

すると,次のような発言が,全体の場に出されました。

・黒板のある男の子の問いといっしょの問いを,私たちも考えていたんだけど,87行目の「ひとりぼっち」という言葉から,ひとりぼっちというのはひまで,ひとりぼっちの優しい人は,みんなで遊びたいと思うけど,ごんはいないから遊べない。

・村に行くといたずらばかりしていたごんは、村人たちに殺されたりするから,ごんは危なくなる。だから遊びには行けない。

・にじこさんに似ているんだけど,ごんはひとりぼっちで寂しいから,もっといたずらで構ってほしいからいたずらをしている。

 

この発言に合わせて,兵十はごんのことをどう思っているのかということと文末の「め」の意味を考えさせました。

・ぬすっとぎつねめ。

・「め」が入ると,ごんに対して怒っている。

・たぶん,兵十は,1回目にいたずらした時は「ぬすっとぎつね」だけど,何回もいたずらをされているから「ぬすっとぎつねめ」になっている。

・こんなごんには,すっごくいらいらする。

 

そして最後に,私がある男の子の問いから生まれた全体の場での話し合いを価値づけして,一人一人の問いの解決に移りました。

 

T そんなごんのことを優しいって言い切っていいのかな。こうしくんの問いと解決を出してくれたから,これだけ言葉にこだわって読むことが分かったね。問いと解決のつながりの強さって大事だね。

 

価値づけしたのは,全体で話し合った板書を基に,「ごんの行動の理由」「ごんの気持ち」「ごんの気持ちの変化」「ごんの性格」が読み取れていることを確かめたことです。

 

話し合いの結果,生み出したかったことは「問いとその解決のつながりについての意識を高めること」と,話し合い解決した先には「ごんの行動の理由」「ごんの気持ち」「ごんの気持ちの変化」「ごんの性格」が明らかになることです。

 

ここまで15分使ったが,この後,25分間、各自の「わたしの問い」の解決に使いました。

そして,残り5分で国語の記録を書かせていきました。国語の記録には,新しく立てた問いと保持で使った解決策を書かせていきました。

 

国語の記録の中で,ある子は「ごんの気持ちが知りたくて,この問いを立てた」という記述をしていました。

 

問いを立てることについて,自分が読書レターに書きたいごんの気持ちを読み解くための問いを立てられていることがわかります。

 

他にも,「ごんが兵十から逃げた時は,命がけで逃げた」という記述をしていました。

 

前時にごんの逃げる様子について「命がけ」というごんの逃げる姿を表現する語彙を使っていなかったため,ある男の子の問いとその解決のつながりを考える学びを通して,出合うことができた語彙であると考えます。

 

また,ある子は「ごんは自分が悪いことをしたから、兵十を助けているので優しくはない」という記述をしていました。単にごんのつぐないの行動を「優しい」と表現するのではなく,どうしてそのようなごんのつぐないが生まれたのかを分析的に見ることができている表現だと考えます。

 

ある子は,「ごんはお礼なんかもらわなくてもいいから、つぐないをしている」というごんの気持ちをより深く読み取ることができている記述も見られました。全体の学びが個人の学びに生かされていることが分かります。

 

ある女の子は,ごんの成長として,ごんの行動を全ての場面から抜き出し,ごんの行動が変わっていることを抜き出し関連付けて読むことで,その変容について読み解いていく姿がありました。

 

本単元で初めて見た解決策ですが,ある女の子がごんの気持ちを読み取るために,その気持ちを用いた例文を作って,自分だったらどのような気持ちと言えるのかを考えていました。(例えば「嬉しい」なら「嬉しい」を使った例文を作って,その状況と同じ状況に自分がいると仮定したら,どのような気持ちになるのかを考えて,ごんの気持ちと自分の気持ちを対比させながら,ごんの気持ちを読む)。とても汎用的な解決策だと考えます。

 

「性格を一言で表すと」を考える解決策も出ていたこともおもしろかったです。性格はその場面ごとに読めるものと,物語全体から読めるものがある。その違いに気付くための解決策だと考えます。

 



ご覧の通り,とても質の高い問いの解決ができています。

子どもたちが静かに鉛筆を動かし,頭をひねりながら自分の考えを生み出し,生み出した考えを友達と話し合いながら,その解決を批判的に見ることができるようになっていく。そんな姿がたくさん見える単元となっています。

さあ,第4時にはどんな学びが生まれるのか,とても楽しみですね!!



ここからは告知になります。

本校の研究発表会は,2月20日(土)になっております。
「ごんぎつね読書レター」が単元の中心に据えて進められる子どもの学びが,授業動画にまとめられています。
ぜひ,多くの先生方にご覧いただきたい内容になっております。

その研究発表会の申し込み締め切りが明日の14日(日)までになっています。
有料の研究会となっているため,軽はずみなことは言えませんが,参加申し込みはまだまだ受付しております。ぜひお申し込みいただき,2月20日(土)にこの「ごんぎつね読書レター」の実践について研究協議をしましょう!!
ご参加を心よりお待ちしております!!

熊本大学教育学部附属小学校 研究主任 国語科 中尾聡志
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