言語活動「3つの『ごんぎつね読書レター』を書く」で、「考えの形成」の力を身に付ける授業⑨(第9時間目)(光村図書4年下「ごんぎつね」)~研究発表会前時の授業~

公開日: 2021年2月19日金曜日 「ごんぎつね」(光村図書/東京書籍/教育出版)

第9時の目標 「クライマックスの場面の2つ目の問いを立て、問いを解決することができる。」


本時は前時に子どもたちが立てた問いを解決する様子の中から、納得する解決ができていない問いを全体で共有して協働的に解決していく時間としました。

その納得できない問いの解決を協力して解決する中で、見いだした問いの解決策を、子ども1人1人が立てた問いの解決に生かしていくのです。

このようにして、問いの解決の質を上げていきました。

その結果として、物語のクライマックスの場面を深く読む方法に気付き、3通目の読書レターを書く内容の厚みを増していかせたいと考えました。

 

T では、始めましょう。今何の力を付けているのかわかります?

 C 物語を読んで理解したこと…(学習課題の身に付ける力を口々に話す)

T いや、あれとあれだよね。

 C 自分の感想や考えをもつ力

T そうだね、感想や考えをもつ力を付けているんだね。関連付けて読むものは何だった?

 C 登場人物の行動、会話、地の文の言葉

T そうだ。行動、会話、地の文の言葉をつなげて読むというのが今回のだったね。当然、それ以外のものをつなげて読むということもありますからね。

 

 学習課題は、パターンを変えながら、子どもたちが常に意識できるようにしていきます。

学習課題を暗唱できるようになれば、それぞれの言葉の意味を尋ねたり、今回のようにそれぞれの意識すべき言葉を抜き出させたりするのです。

変化を伴った繰り返しの中で、「学習課題」を子どものものとしていかせました。

 

この時間に取り上げた問いは、ある男の子の「引き合わないなあ」と言いながら、次の日にもくりを持って行った行動の理由についての問いである。クライマックスの場面を読み解く上で、重要な問いだと考えます。

以下に、どのように読んで、どのように問いを解決していったのかをご紹介します。

 

 児童A 5の場面の終わりに、「おれは引き合わないなあ」の「な」で終わっているじゃないですか。その終わり方が微妙な終わり方なので、それを基に考えたんですけど、5の場面の終わり、その時は夜だったじゃないですか。で、兵十のおっかあが死んだ時も夜に穴の中に帰って考えてたじゃないですか。なので、5の場面の終わりと6の場面の最初の間で、また夜、穴の中に帰ってまた考えてたんじゃないかなと思って、で、穴の中で悩んでいた時に前に僕が解決した問いにも「なぜ葬式の次の日に兵十の家に行ったのか」という問いの答えと同じ答えの、やっぱり兵十が気になってしょうがなかったのが原因で、兵十の家に行ったのではないかと思います。

 

児童Aくんの読み方は、つまらないなあの「なあ」から考えています。

児童Aくんは文末の表現を読んで、その文末の表現と六の場面の最初がなんかしっくりこないなと思ったわけです。だから、児童Aくんは、文末の表現から五と六の間に何かがあると考えました。物語の空所を読む、質の高い読みです。周りの友達も、うなずいたり、黙って考えたりしながら、児童Aの考えを聞いていました。

 

 児童B ぼくもそこ考えたんだけど、ぼくは「なぜこいつはつまらないなと言って、その後でもくりや(松たけ)を持って行ったのかを調べて、それで、それは1つ目の問いの、「なぜ、くりや松たけを毎日置いていったのか」につながると思うんですけど、その解決で、ぼくはごんが兵十と同じひとりぼっちで、同じさみしさを味わっているから、そのさみしさを和らげるために、くり(や松たけ)を持って行ったと思うのですが、ということは、ごんは兵十をほっとけなかったということがわかって、ほっとけなかったという気持ちの強さが、つまらないや引き合わないにつながっても持って行った。

 

児童Bくんは、「ひとりぼっち」という言葉に着目しています。この言葉は、「俺と同じひとりぼっちの兵十か」からきている言葉です。ごんが次の日も持って行った理由を考える上で、関連付けて読むべき叙述です。

 

 児童C ぼくは、ごんはつまらないなっていう思いには、162から165行目のセリフからわかる、ごんはつぐないをしていたのが、それが(兵十に)わからなければ意味がないと考えている。それで、ぼくは多分、ごんがやったって言うことを少しずつ気付かせるために、終わっても持って行ったんだと思います。

 

児童Cくんは、この後「もっていってやるのに」という表現に着目します。そして、「やる」に込められた意味を考え、「もっていっている」との違いを考えさせる学びを生み出しました。

 

子どもたちは、「引き合わないな」「つまらないなあ」と言いながらも、明くる日もくりを持って行った理由を明らかにするために、前時で使っていた「文末の表現を読む」という解決策と、物語の主題ともつながる「ひとりぼっち」という叙述とつなげて読む解決策と、物語の中の叙述を比較して、その違いを考えることで、ごんの思いを読む解決策を見いだしていきました。

これらがそのまま個々人の問いの解決に直結する場合しない場合があると思うが、どの解決策を用いる場合にも言葉による見方・考え方を働かせていることがわかります。

このような解決策と子どもたちが向き合い、自分の問いの解決という文脈に合わせた中で、解決策を生み出したり、友達の解決策を用いたりするようになります。

この問いを立て、解決策を用いる学びの質を上げることは、子どもたちが物語を読む力を高めることに直結します。

この後、子どもたちは自分の問いの解決に取り組んでいったが、児童Aの文末表現にこだわる読み方が、一番広がりを見せた解決策でした。

また、本時における問いの解決の質を上げたということだけではなく、見いだされた解決策は、単元後半の時間においても活用されていきました。

このような学びを経て、前時の授業を終えていきました。

 

授業週末に書いた「国語の記録」では、クライマックスの問いの1つ目の質がとても高いと感じていたため、国語の記録を書く視点の中に、クライマックスの場面の1つ目の問いをどのように立てたかを尋ねました。

一覧表で小さな字となりますが、以下がその文章となります。

子どもたちにとって問いを立てるということをどう捉えているのかが読み取られる貴重な資料だと考えます。

上記の中で、「家庭学習での音読の中で気になっていた」という表現があります。

さらには、「一読した時から心に引っかかっていた」という表現もあります。

問いを立てる学びを経験している子どもたちは、授業中であれ、家庭学習であれ、物語を読むという行為の中で、問いを立てる構えができていることがわかります。

 

他にも「気になっていた」「兵十の気持ちも知りたいから」「このごんの気持ちを知りたいなあと思ったから」という表現からは、問いを立てる際、自分が知りたいことについての問いを立てていることが分かります。

その知りたいなと思うきっかけとして、[〇〇君と話し合っていたら、その問いが出て来た]ということもあります。

これまでの授業の中で、自分の問いの解決に納得できていない際に行う話し合いによって、問いは生まれていくものなのではないでしょうか。

るうまの問いも興味深い。るうまは問いを連続する思考の中で立てている。るうまの学びは、一人で立てて、立てた問いを一人で解決する学びが中心にあった。その解決に対する自分の納得の度合いに応じて、友達との話し合いを行っていたが、問いが連続する思考の中で生まれているということがわかる。

 

ここまでが、前時の授業となります。

この前時の学びを活かしながら、5人が立てていた「兵十に撃たれたごんの気持ち」についての問いを取り上げ、学級全体で協力して解決する学びを生み出していきます。


熊本大学教育学部附属小学校 研究主任 国語科 中尾聡志

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