チャットでの質問にお答えします!〜研究発表会公開授業「大造じいさんとガン」(光村図書5年)〜

公開日: 2021年2月28日日曜日 「大造じいさんとガン」(光村図書/東京書籍5年)

 


先日の研究発表会にご参会いただいた先生方,大変ありがとうございました。

分科会ではチャットにも多数ご質問をいただきましたが,時間の関係でお答えできないものもありました。

そこで,今回はブログの中でその質問にお答えしていきたいと思います。

<質問>大造じいさんの見方・考え方が授業の中では問われていたと思います。しかし,作品の中で外せないのは,「残雪」とは何かという問いである。子どもたちの中に残雪と大造爺さんとの関係性を問うような視点は授業の中で表れていたか。(黒瀬先生@甲州市立松里小)

<質問>上記に関連いたしまして、私も考えさせられたところがありました。今回の授業では、大造じいさんの仕事に対する見方考え方が主になっていたように思いますが、この物語の学びは残雪との関りは、外せないとは思います。残雪に対する大造じいさんの見方や考え方の変容が人物像にせまってけるとおもいました。ちかさん(※以下,児童名は全て仮名です)が、本時でなかなか意見が伝えられなかったのは、もしかしたら大造じいさんの残雪にたいする見方考え方の変化があり、心が動かされたというところの深い読みがあり、仕事への姿勢という観点からでは説明ができなかったのではないかと感じました。(木村先生@伊勢市教育研究所)

黒瀬先生,木村先生がおっしゃる,大造じいさんと残雪の関係性は,そこに迫る過程を通して本単元で身につけるべき資質・能力を育む上で大切なところになると思います。

そしてご指摘の通り,本時の授業,特に全体で話し合う場面でそのような姿は現れていませんでした。

ただ,一人一人の学びの中には見て取ることができました。

例えば,分科会でも取り上げた6班のこうや君は,単元を通して次のように問いを発展・更新していっていました。

33行目の「罠に1羽もかかっていない」時に大造爺さんはどういう風に思ったか。
なぜ大造じいさんはガンを飼ったのだろうか。
なぜ大造じいさんは残雪をおりの中で治療していたのか。(第1時)
     ↓
大造じいさんは,残雪を見守っていた時どう思っていただろう。(第3時)
     ↓
大造じいさんはやさしいのか?やさしくないのか?(第4時)
     ↓
大造じいさんと残雪との関係は?(第5時)
     ↓
大造じいさんにとっての「狩人のプライド」とは?(第7時)

下線のような大造じいさんの見方の変化や相互関係についての問いを立てている子どもは,全体の3分の1程度いました。

その問いを「問いの一覧表」によって共有してはいましたが,全体で取り上げてはいませんでした。

前時までにこの問いを取り上げておけば,本時の目標の「人物のものの見方・考え方」を捉える上での関連付け方をより広げ深めることができたと思います。

木村先生は,1班のちかさんに注目していただき,担任として本当にうれしく思いました。ちかさんは,普段みんなの前でなかなか自分の思いを表現することができないお子さんです。

本時では,同じ1班のあると君の「また堂々と」を根拠とした考えについて見取り,全体でも取り上げたのですが,ちかさんがあのようにグループで発言していたことは私もビデオで省察していく中で気づいたところでした。

ありがとうございました。

私の問いを立てさせることに、難しさを感じてしまいます。精査解釈すること、黒ポンを考えることは、全員で思考していってもたどり着けるような気もするのですが、公立校の私たちが取り入れていくメリットや手立てについて教えてください。(松村先生@熊本市立御幸小)

松村先生がおっしゃる通り,全体で人物像について精査・解釈の話し合いはできると思います。

もしかしたら,その方が全体でより“深い読み”にはたどり着けるかもしれません。

しかし,「わたしの問い」を立て,それぞれが『大造の流儀』をつくっていく一番のメリットは,子ども一人一人の本気度,切実感を引き出せることだと思います。


子どもの意欲を引き出すために,教師はさまざまなしかけします。

「教材文の中にダウトをしかける」「挿絵をバラバラに提示する」などは,その顕著な例です。

わたしもこれまでさまざまなしかけを試し,意欲面だけでなく,教科内容につなげられる効果も感じています。

その試行錯誤の中でたどり着いたのが,単元レベル,大きなしかけとしての「言語活動」と「わたしの問い」でした。

自分自身が主体となって創り上げたいもの(=言語活動)があり,

それを創り上げるために解決すべき問いがある。

その学習環境を整えることが,教師の役割だと思っています。

具体的には

「“身に付ける力”につながる問いの解決の必然性を生む言語活動を設定すること」

「言語活動のどこに,どんな“身に付ける力”が表れるかを教師と子どもで共有した上で,問いを立てる場を設定すること」

「学習課題達成につながる問いにになっているか,子ども自身が協働的に吟味する場を設定すること」などです。

詳しくは,分科会資料の「実践編」と「授業記録」でも触れていますので,そちらをご参照いただければ幸いです。


 溝上先生の実践の単元名にも、教科書の扉のページにも「すぐれた表現に着目して読み~」とあります。教科書の物語の後の「たいせつ」の部分も、「すぐれた表現~」に特化されて書かれています。『大造じいさんとガン』特有の「すぐれた表現」から「大造じいさんの人物像」に関連させた手立てや、児童がどのように「すぐれた表現」を関連付けて人物像に迫っていったかの詳細を知りたいです。松尾先生@佐賀大学附属小

「わたしの問い」を子どもたちが一人ひとり持つ中で、解決策の選択も大切になると思います。解決策を子どもたちが選んだり、見出したりするための溝上先生の手立て、出があれば(普段の単元学習の中でも構いません)教えていただけるとありがたいです。藏田先生@上天草市立阿村小

今回の単元では,「表現の効果」を中心的に取り上げてはいませんが,重点指導事項に設定した「人物像」を想像していく上で,情景描写等のすぐれた表現に着目することは大変有効です。

そこで,次の4つの手立てをとりました。

1 学習課題の「思考操作」のフレーズで見通しをもたせ,前単元で共有した解決策についての掲示を活用する

2 情景描写に着目した子どもを取り上げ,全体で価値づける

3 2を取り上げた日の音読に「情景描写を探しながら」という課題を加える(家庭学習)

4 3以降,一人一人のノートで情景描写に着目しているところに,マーカーや書き込みなどで価値づける




一つ一つは特別な手立てではありませんが,「4」の一人一人のノート指導にまでつなげることが重要だと考えています。


最後までご覧いただきありがとうございました。

先生方からのご質問,ご意見から,わたし自身が一番学ばせていただいたと思います。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


国語科

溝上 剛道




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